インバウンド観光政策の定量的評価手法
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栗原 剛:財団法人運輸政策研究機構運輸政策研究所研究員
[はしがき] 我が国は観光立国の推進を重要政策と位置づけ、訪日外国人来訪者数の増加等を目標とするインバウンド観光政策が展開されている。10年前に比べ、倍増した訪日外客者数をみても、成果は
上がりつつある。しかしながら、政策目標である2016年2000万人という数字を達成するには、引き続きインバウンドの玄関口となる空港整備、訪日外客に対する各観光地の受入環境整備など、多くの
課題が残されている。需要構造や訪日外客の我が国に対する評価を解明、把握した上で、より効果的な政策、戦略を検討することが必要である。
これまで、国際観光需要の推計には、単純なトレンドモデルが利用されているにに過ぎなかった。国際観光市場の拡大は、国間の観光客の"とりあい"を生じさせており、需要構造を、より複雑にしている。
また、国際統計データの制約も大きい。これらを原因として、分析・推計方法も確立してこなかったのが現状である。
本論文は、インバウンド観光政策について需要、来訪者意識の両面から、定量的に評価する手法構築を試みたものであり、時宜性の高い研究と評価できる。特に、これまで着地側での推計に依存していた
同分野の需要推計手法について、論理性、操作性の高い推計方法を構築している点で、貴重な研究成果を示している。また、旅行環境という観点からの来訪者評価を計測していることは、今後のインバウンド
観光政策の推進に対しても重要な知見を示しているといえる。
本論文は、現在(財)運輸政策研究機構運輸政策研究所の研究員である栗原剛氏が、平成23年3月まで在籍した筑波大学での研究成果をとりまとめた博士(社会工学)論文に若干の手を加えたものである。
筑波大学大学院システム情報工学研究科 准教授 岡本 直久
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鉄道駅エスカレーターでの転倒事故をなくするために
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竹原 壽郎:(財)交通統計研究所理事 (社)日本鉄道車両機械技術協会 鉄道駅のエスカレーター安全対策プロジェクト
財団法人交通統計研究所理事である筆者は、現在日本鉄道車両機械技術協会の理事も務めており、昨年の8月までは同協会の機械委員長をしていた。機械委員会では最近のバリアフリー化に伴い増加している鉄道駅の
エスカレーターでの転倒事故をなくするための研究が行われ、平成22年11月に報告書をまとめ発表した。それに基づき監督官庁、鉄道事業者への説明が行われ、ハード、ソフト両面にわたる対策が実行されつつある。
この報告書は社団法人日本エレベーター協会、東京消防庁の統計、調査結果およびJR本州3社の実態調査を分析し、エスカレーターのリスクがどこにあるかをつきとめ、それをもとにハード、ソフト面の対策を講じている。
そういう意味では鉄道駅のエスカレーターという切り口での調査、統計、分析を行っており、「交通と統計」の復刊にあたって、日本鉄道車両機械技術協会の了解も得て、調査、分析関係を中心に紹介するものである。
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