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交通と統計 2012年9月(通巻29号)



2012年9月28日発行
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[査読付] 軌道保守計画作成における最適化モデルの適用
  
三和 雅史みわ まさし:公益財団法人鉄道総合技術研究所 軌道管理研究室長

 バラスト軌道上を列車が繰返し通過すると、列車荷重により道床バラストや路盤が変形するため、軌道面の不整が徐々に大きくなる。この不整が大きくなると、列車の走行安全性や乗り心地が悪化するため、 限られた軌道保守費や保守用機械等の資源を有効に活用して軌道を保守し、適切な状態を維持していくことが重要である。本稿では、このような効率的な保守の実現を支援するために構築した軌道狂い保守計画の 最適化に関するモデルを示す。
経済統計としての交通関連統計 ー現状と課題ー
  
宇都宮 浄人うつのみや きよひと:関西大学経済学部教授

 交通モードが多様化・複雑化している現状において、交通の実態を正しく把握するための基礎的なデータとして交通関連統計の重要性は増している。しかし、交通はさまざまな 経済活動の派生需要として発生するため、交通関連統計と他の経済統計を組み合わせて分析することで、マクロ経済活動と交通の関係を理解できるほか、交通政策、あるいは広く経済政策 に対する示唆を得ることもできる。
 近年、公的統計の改革があり、交通関連統計についてもその位置づけが改められるとともに、新たな施策として、観光統計の整備が精力的に進められた。もっとも、交通統計の現状と課題 について、観光統計以外について、経済統計という観点から具体的に言及している論稿は必ずしも多くない。
 そこで本稿では、まず、交通関連統計の問題点や活用に関する先行研究を概観した後、近年の公的統計をめぐる動きと交通関連統計の現状と利用状況を整理し、交通関連統計の具体的な 分析例を用いながら、今後の課題を考えてみたい。
LRTとBRT
  
中島 啓雄なかじま ひろお:元参議院議員

 LRT(Light Rail Transit)といゆう名前はポピュラーなものとなってきたが定義となると難しい。通常の鉄道(Heavy Rail)より連結両数、乗車定員は少なく、スピードもやや遅いが(最高60〜70Km/h) 、多くは連節車両、数編成連結可能な車両もあり、低床・バリアフリー・軽量・快適で多くは専用軌道上を走行して、従来の路面電車よりはスピードと定時制に優れ、定員は多く、一般鉄道より 建設・運営コストはかなり安い公共交通機関といったところである。
 BRT(バスラピット・トランジット、Bus Rapid Transit)は、まだあまりなじみのない名前だが、バス専用レーン、低床連接バス、優先信号などにより、高速・大量・定時・快適で、乗用車より早く 、LRTより低コストを目指したバスシステムと言えよう。
 本稿では、内外のLRT、BRTの事例を紹介し、その運営や今後の発展性等について述べる。
鉄道ルート形成における予想と実績
  
高松 良晴たかまつ よしはる:元東日本旅客鉄道(株) 代表取締役副社長 元日本鉄道建設公団副総裁

 我が国の鉄道は、明治5年(1872年)新橋・横浜間開業の鉄道創業の日から140年経ち、今や高速鉄度のネットワークが、幹線に、都市交通にと、広がっている。
 これら鉄道ルートの形成過程を、一つひとつを追ってみると、常にどの鉄道路線も、事業としての経営的成功が求められてきた。
 特に、その傾向は、鉄道が自動車交通、船舶輸送、航空など、他の公共輸送機関と競合しはじめた昭和30年代後半以降に顕著なものとなっている。それだけに、鉄道の新規路線着工にあたっては、 まずは、総工事費と需要(輸送人員)を踏まえての長期的な収支や資金調達などの経営見通しが立てられた。
 そして、昭和30年代後半から今日に至るまでの50数年間にわたり、新幹線網の建設、国鉄東京五方面作戦、及び東京圏近郊部での第三セクター鉄道建設により鉄道ルートの形成が進んだ。
 だが、一方、着工後に、当初の経営見通しの前提条件が大きく変わり、総工事費は2〜3倍、需要(輸送人員)・収入は半減と予想値と実績値との間に大きな乖離を生じた。また、外部経済波及効果 は、税収などの具体的な実績値で検証できない状況が続いている。
 何故、かような状況となったのであろうか。シーザは、「人間ならば誰にでも、すべてが見えるわけではない。多くの人は、自分が見たいと欲することしか見ていない」と言ったという。
 筆者は、これらの鉄道ルート形成に少なからず関わった身として、「同じ世代、同じ職場で過ごした誰しもが、常に、誇りをもってフェアーな仕事をして来たはずだったのだが・・・」との思いを 込めて、公文書の保存・公開が進む中、古い資料を見直し、あらためてあれこれ考えながら、「鉄道ルート形成における予想と実績」との表題で本稿を書かしていただいた。
 「歴史は繰り返す」と言われ、また、「歴史の上に今がある」とも言われる。未来へのご参考になれば、望外の幸せである。
台湾高速鉄道からの教訓  ―高速鉄道を導入しようとしているアジアの国々へ―
  
田中 宏昌たなか ひろまさ:元東海旅客鉄道(株)代表取締役副社長

 現在、環境やエネルギーが地球規模の課題になっているせいか、アジアでも高速鉄道計画が花盛りだ。これら計画の幾つかは、やがてFS(Feasibility Study)が実施され、スペック(SPEC) が作られ、詳細設計、工事着手、試験運転、開業と進んでいくことだろう。
 台湾高速鉄道projectについての執筆依頼をお受けしたのは、台湾高鉄外国人技術陣との貴重な経験がこれらアジアの高速鉄道計画の成功に役立つに違いない、つまり、他山の石になればと考えたからである。
鉄道林の歩み
  
島村 誠しまむら まこと:JR東日本研究開発センター防災研究所長

 鉄道林は、吹雪、雪崩、土砂崩壊、落石、飛砂、強風などによる災害を防ぐ目的で線路の周囲に造成される森林であり、鉄道システムを構成する数々の要素施設の中でも、歴史の古さ、規模、防災効果 の大きさのいずれからみても重要な施設であるにも関わらず、一般人はもちろん鉄道関係者の中にもその存在について知る人の少ない、いわば、きわめつけの"unsung hero"(縁の下の力もち)である。
 近年、鉄道林を巡るさまざまな自然的、社会的、技術的環境条件の変化によって本来の役割を終えるものや従来の施業法が時代の要求にあわなくなったものが顕在化する一方、環境保全への取り組みの 一環として改めて整備し直されているものもある。ここでは、鉄道林の成立から今日に至る変遷を振り返るとともに、将来にむけた新たな可能性について展望する。
浮上式鉄道研究開発50年を顧みて
  
藤江 恂治ふじえ じゅんじ:元(財)鉄道総合技術研究所技師長

 1962年に鉄道技術研究所でリニアインダクションモータ(以下LIMという)の研究がスタートし、ヤード用やリニアメトロ、HSSTで実用化された。米仏でのLIM開発は実用化していない。
 米で提案された超電導浮上方式は基礎試験のみで終結。日本では基礎試験装置、LSM200、ML100、ML100Aを経て、宮崎実験線逆T型ガイドウェイでのML500の成功。ガイドウェイをU字型として MLU001、MLU002,MLU002Nの実験成果の成功を受けて、山梨実験線に移行した。これら技術の流れと共に、支援をいただいた国鉄や運輸省、財界などのVIPの視察状況にも触れている。
 今年は、1964年に東海道新幹線が開業する2年前1962年にレールと車輪の摩擦力に頼らない非粘着駆動装置であるLIMの研究開発が開始されてちょうど50年になる。
 筆者は1962年に国鉄に入社、1967年鉄道技術研究所勤務から1992年のJR総研退社まで、3年間の大船、大宮工場勤務を除く22年間、浮上式鉄道の研究開発に携わり、1997年から2008年まで 国土交通省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会の特別委員として技術評価に携わった。
 開発開始65年後の2027年には超電導リニアが東京〜名古屋間に開業が予定されていおり、研究開発50周年の節目として、研究開発の経過をたどってみたい。
車両のエネルギー効率・エネルギー消費
  
久保 敏くぼ さとし:元国鉄大宮工場長

 石炭、石油などのエネルギー資源の乏しい日本は世界各国からの輸入資源に頼らざるを得ず、電力も水力のほか原子力エネルギーへの依存度も高く将来への不安を抱えている。 鉄道車両、道路車両などの移動機械は石炭を焚く蒸気機関車から石油を原料とする内燃機関を原動力として発展してきたが、エネルギー効率が低いのが難点だ。鉄道は電化の進展 によってより効率の高い電気機関車、電車が主力となってエネルギー効率も高まり、環境への負荷も軽減されてきたが、自動車についてもようやく進化の兆しが見えてきた。 一方、駅などの地上設備に関してもバリアフリー化や快適な環境を維持するために多くのエネルギーを消費する時代になり、"省エネルギー"が叫ばれる中で実情の把握が必ずしも 十分でない
 国鉄時代から車両のエネルギー効率の向上には多くの努力が費やされ、実態を把握するための試験方法も開発されてきた。筆者は国鉄退職後、海外へ輸出される車両のエネルギー 消費に関して試験に立ち会う機会を得たほか、国の政策で助言を与える立場を経験したが、その経験が少しでも将来に役立てば嬉しいと思っている。
 
鉄道資料研究: 鉄道統計発達史史論ー2
  
加藤 新一かとう しんいち:一般財団法人交通統計研究所理事

 財団法人交通統計研究所は、日本国有鉄道の計算業務・統計業務の実務を担当する現業組織として設立された歴史を有し、人的つながりも深かった。このような経緯 から、日本国有鉄道の解散にいたる過程のなかで、とくに、明治期以来の国有鉄道の統計部門が統計業務のために現用し、公式に保存してきた鉄道統計および関連資料を 、その散逸を阻止し保全する等の目的のため、当時の所掌部局である日本国有鉄道情報システム部からそのまま引き継ぎ、整理・保存してきた。すなわち、鉄道統計の いわば原本を、それが作成されたままに完全に保存する主体である。
 ここでは、国有鉄道が残した膨大な情報群のそれぞれについてその性格を明らかにし、それらが作成されたバックグラウンドに即し整理・活用しようとする立場からも 「鉄道統計」の問題意識を再検討し、「鉄道統計」を核とする統計系列群をそれらが作成されたままに再構成してみる研究作業が必要であると考える。本稿はその一環を なすものである。
新しい鉄道資料館の発足について
  
倉田 賢治くらた けんじ:(財)交通統計研究所鉄道資料館館長

 交通統計研究所は、これまで公益事業の一環として、鉄道事業等の統計資料の収集を行い、統計の普及・改善に役立てるとともに、交通事業者、研究者の方々に資料の提供などを行ってまいりました。 しかし、当研究所が所蔵していることを知っていなければ、それらの統計資料を利用することができませんでした。当研究所では、2003年10月14日に『国有鉄道 鉄道統計目録』を出版しておりまして、これを 手にした人だけが、必要としている資料に辿り着くことができました。その他の利用者は、研究者同士の口コミでやってくるなど限定的でした。一部の限られた人にしか情報が提供されない現状に鑑みまして これからは、門戸を広く開き、誰もが利用できる環境の整備が必要だと実感しました。歴史的価値の高い資料を厳重に書庫で保管しておくことも大事ですが、資料は使われてこそ真価を発揮します。これからは、 利便性を向上させ、ますます資料を利用していただき、より一層研究等のお役に立てていただくことで、社会に貢献していこうと考えました。そこで新法人移行を前に、鉄道資料館をこの夏8月1日に開館いたしました。
 
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