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交通と統計 2014年1月(通巻34号)



2014年1月20日発行
定価2000円(税込み・送料別)
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危機管理とユーモア
  
吉野 準よしの じゅん:エッセイスト 元警視総監

 そもユーモアとは、なんぞや?私は、心の"遊び"だと思うのです。自動車は、ハンドルの遊びがないとうまく動かせないわけです。人間の場合も同様でして、心の遊びを欠いていると うまく行動できない。心の遊びの最たるもの、それがユーモアでしょう。笑うことによって、心にゆとりが出てくる。問題解決の早道がみえてくることもあるのではないか。 最近、危機管理ということが、各方面で強調されています。さまざまな研究がなされ、諸対策が検討されています。そうゆうものの中には入っていないが、私は"危機管理にはユーモアを"と提唱しております。
長期人口減少期を迎える東京周辺の都市鉄道 -ポスト"運輸政策審議会答申第18号”への提言-
  
高松 良晴たかまつ よしはる:鉄道OB 元東日本旅客鉄道 代表取締役副社長

 現在の東京周辺の鉄道整備の指針となっている運輸政策審議会答申第18号は、目標年次の2015年が迫っている。そろそろ、次の諮問・答申がなされる頃である。
 我が国は、長期的な人口減少期を迎え、経済大国を目指すことよりも、国民1人当たりの国内総生産の向上を目指す時代となっている。「長期的視点の国土計画の将来を見据えて 、その時々の経済状態に応じて、短期的視点の経済計画を臨機応変に実施していくものだ」との碩学の言葉がある。
 新しい答申は、経済計画ではない。どうか、次の答申案作成に関わる方々は、まずは、将来100年後の公式のしっかりとした推計をなさった上で、国家100年の計を見据えて、 何をすべきではなく、今、何が出来るか、を論じ、新しい答申を書いていただきたい。
 以下は、そのための問題提起である。
水力発電に伴う利水と河川環境の調和 -JR東日本信濃川水力発電所-
  
増本 治夫ますもと はるお:元東日本旅客鉄道株式会社 取締役 
笠井 高志かさい たかし:東日本旅客鉄道株式会社 信濃川発電所業務改善推進部 担当部長

 今から95年前の大正8年、第一次世界大戦後の国内鉄道輸送が増大する中、信濃川水力発電開発計画が閣議決定され、石炭節約を目指して鉄道電化と自営による 電力確保の方針が樹立された。
 昭和6年に本格着工となり、関東大震災や太平洋戦争などで工事の中断と再着工を繰り返しながら第1期〜第4期工事の全体工事が昭和44年に完成した。
 その後、首都圏の主要線区の複々線化や電車編成の長大化、冷暖房強化などにより、一層電力需要が高まり、これに対処するため、昭和60年には信濃川の 水をさらに活用すべく、新たに150立方メートル/sの水利使用の承認を取得して信濃川水力発電再開発工事(第5期工事)に着手し、計画どおり5年後の平成2年にこれを完成させた。
 平成16年10月の新潟県中越地震では、特に3つの調整池の被害が大きかったが地震による変状は表層部のみに限られ、心壁と呼ばれる重要な遮水壁の損害がなかったこともあり、 平成18年3月には完全復旧することができた。
 平成21年3月には信濃川の水利用に係わる不適切事象に伴う水利用許可の取り消し処分などで、1年3ヶ月の水力発電停止期間があったが、地域との共生をはかり 地域貢献に努める一方、試験放流による河川環境調査の実施計画、魚道の研究・改築計画とサケ稚魚放流活動の実施などを経て水利用許可を再取得し発電を再開した。
 東日本大震災後は地域の理解と国土交通省の許可を得て取水量増加による発電を行うなど、首都圏の電力確保に協力するとともに、宮中取水ダムの魚道を改善し モニタリングを継続するなど、水力発電と河川環境の調和に取組んでいる。
 本稿は、長い歴史のある信濃川水力発電の経緯を振り返るとともに、近年における河川環境との調和、地域との共生施策等についての取り組みをまとめたものであり、 今後の長期にわたる、より良い水力発電事業に資することになれば幸いである。
更なる生活サービス事業の拡充に向けて
  
森本 雄司もりもと ゆうじ:東日本旅客鉄道株式会社常務取締役 事業創造本部長 人事部担当、厚生部担当

 2012年10月、当社グループは、会社発足から通算5回目の経営構想となる「グループ経営構想D〜限りなき前進〜」(以下、グループ経営構想D」)を定め、経営の 基本的な方向性と具体的に実行していくことをまとめた。また、1年後の本年10月には、その中でも特に力を入れて具体的に取り組んでいく項目として「今後の 重点取組み事項」を策定し推進していくこととした。
 当社グループは、鉄道事業、生活サービス事業、IT事業を経営の柱としているが、成長戦略の大きな柱である生活サービス事業の更なる拡充を図るためには 「大規模ターミナル駅や沿線ごとのブランド確立」、「地方中核都市におけるまちづくりの展開」、「[のもの]や産直市の展開による地域経済の活性化」等の 生活サービス事業に関わる「今後の重点取組み事項」について、これまで以上に具体的かつスピーディーに進めていかなければならない。
 本稿では、現在進めている生活サービス事業に関する各種取組みについて具体的な事例をもとに紹介するとともに、合わせて、今後、重点的に取り組んでいく 事項についての方向性などについて紹介する。
旅客の求める安全・乗心地の観点での線路保守 -主として東海道新幹線について-
  
磯浦 克敏いそうら かつとし:双葉鉄道工業株式会社代表取締役社長 元東海旅客鉄道(株)新幹線運行本部施設部長

 最近、インフラのメンテナンスについての議論が盛んです。
 鉄道の線路は、列車の走行に伴うエネルギーをマクラギ下の採石が崩れることにより吸収するという特殊な構造物であり、メンテナンスを日々行うことを前提としています。
 半世紀前、最高速度100Km/h程度で走行する鉄道の保守経験しか持たなかった保線関係者にとって、200km/hで走行する弾丸列車計画が持ち上がった時は、列車振動による砕石の崩れにメンテナンスが 追いつかないのではないか、との心配までする状況でした。
 開業後は、予想以上の困難な課題に直面しては改善することの繰り返しであり、国鉄時代は安全の確保に精一杯でした。
 本稿では民営後それがどの様に変わったのか、また安全・正確・快適な旅の提供に向けて、東海道新幹線では線路保守にどのように取組んでいるかを述べます。なお、地震、豪雨など災害への 対処も保線の重要な仕事ですが、ここでは割愛します。
鉄道が受けた過去の雪害を鉄道統計と気象統計から見る
  
永瀬 和彦ながせ かずひこ:金沢工業大学客員教授 元JR総研車両研究室主任研究員

 日本国土面積の約1/3は冬季には雪で覆われる。雪が鉄道輸送に及ぼす影響は少なくないが、これを最小限に留めるためには、先ず、雪害を降雪量や積雪量などの気象観測データによって定量的に把握し、 雪害と輸送障害との関連を調べるべきなのであろう。ところが、雪害に関する過去の統計は極めて限られており、50年より前の雪量に関する統計はなく、それ以前の状況は 実質、闇の中と言っても差支えない。以下には、雪が鉄道輸送に及ぼした影響を限られた過去の鉄道統計及び気象統計などを通して振り返り、さらには、今後の課題を 交えて私見をのべて見よう。
巨大システムにおける非線形性振る舞いと人間系予想の線形性 〜「rnR見える化」によるコミュニケーション構造の改築について〜
  
三戸 祐子 みと ゆうこ:人とシステムの関わりをテーマにするライター

 現代人の日常生活は機能的にも心理的にも巨大システムに支えられている。ところが巨大システムに特徴的な非線形振舞いを、人間は線形予想に置き換えて捉えがちだ。ここに生じる 人間側の「錯覚」や「思い込み」「勘違い」が、巨大システムにおける機能低下や「想定外」のトラブルにもつながっている。
 また、現代人にとって巨大システムはすでに「環境」の一部でもある。事故防止や機能向上の観点のみならず、日々暮らす環境改善の観点からも、システムの振る舞いと人間の感性 との調和が求められる。
 信頼性向上のための従来からの取り組みに加えて、人間の予想に直接働きかける「rnRの見える化」※が必要だ。
 ※r:アイテム(部品)の信頼度、n:アイテムの数、R:システム全体の信頼度
公益法人制度改革の目的と課題
  
中田なかた ちず子:公認会計士・税理士

 平成20年12月1日に施行された新公益法人制度は、旧民法第34条の社団法人・財団法人が自らの意思で公益社団・財団法人となるか又は一般財団・財団法人となるかを 選択し、平成25年11月30日までに移行しなければならないとするものである。本稿では、移行期間満了を機に、新制度の目的、内容などについて顧みるとともに、今後の 課題について考える。また、新制度施行に伴い改正された会計基準、税制に関する問題点や課題などについて私見を述べたい。
 
[統計講座] 輸送密度から鉄道の本質が見える 「第3回 東京圏中距離電車のサービス格差を生じさせているもの
  
大内 雅博 おおうち まさひろ:高知工科大学社会システム工学教室教授

 要旨:首都圏JRの放射状線区の中距離電車区間の列車本数差を生じさせている要因を明らかにした。山手線接続駅手前における各方面別(東海道線、東北線、常磐線)の 輸送量に応じて1車両当たりの平均乗車率がほぼ等しくなるような輸送力を設定していると仮定すると、線区間の輸送力の差が説明可能であった。中距離電車は都心部での 輸送力を分担しているため、これが中距離電車区間の輸送力設定にも影響し、線区間の格差を生じていることが分かった。また、郊外部に都心部よりも1車両当たりの平均乗客数 が高い区間が存在するのは、都心部で線路を共有する他線の存在により自区間での増発が不可能な構造上の理由によるものであることを示した。
[速 報] 鉄道統計(平成24年度) JR・関連機関 
福永 壽英 :一般財団交通統計研究所 鉄道資料館

   鉄道に関する基本数値(社別の線区数、駅数、運輸成績、社員数、損益計算書、貸借対照表等)を各種資料から集約した統計資料です。
JR各社だけでなく、大手民鉄、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の情報も一部掲載しています。
 
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