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「東海道新幹線50年 -"4つの節目”をふりかえる-」
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須田 寛:東海旅客鉄道株式会社 相談役
東海道新幹線が開業してこの10月で50周年を迎えた。開業以来、約56億人の乗客にご利用いただくことができた。そしてこの間、乗客の死傷につながる列車事故「0」の
記録を更新し続けてきた。しかし、新幹線50年の歩みは決して平坦なものではなかった。山あり谷あり、それは苦難の道であり、「よくぞ50年」というのが担当者の心境である。
しかし、今日まで発展・成長できたことはひとえに乗客のご愛顧によるものであり、かつ、それを支えてきた新幹線建設時から先人が努力して構築してきた安全運行システムと
安全運行に努めてきた関係者の労苦がその効果を発揮したことにあったと考えられる。
新幹線50年の経緯をふりかえると、そこに4つの大きな経営面ないし営業面にわたる発展の"節目"があったように思う。即ち、@開業期、A山陽新幹線との直通運転で1000Kmに
及ぶ国土を縦貫する幹線鉄道に脱皮した時期、B国鉄改革によって新しく東海旅客鉄道(株)の経営となり、「JRの新幹線」として再出発した時期、CJRによる経営上営業上の
新施策を結集した「第二の開業」期ともいうべき時期に分けることができよう。そして、その節目を乗り越えて新しい発展過程に入るための様々な経営努力が、今日の新幹線
の基盤をつくってきたと考えられる。
そこで本稿では、新幹線50年の歩みをやや異なった角度から振り返るため、この"4つの節目"での出来事を思い出し、現在の目で反省したいと考えた。新幹線50年を経営全般に
わたり立体的に捉えてみたいと思ったからである。以下、その主なものを述べてみたい。
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東海道新幹線の「営業」の50年
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杉浦 雅也:東海旅客鉄道株式会社 新幹線鉄道事業本部運輸営業部営業担当部長
昭和39年の開業当初、1日あたり約6万人のお客様にご利用いただいていた東海道新幹線。その後、「のぞみ」による時間短縮やダイヤ改正による利便性向上とともに
、様々な営業施策により、現在では1日あたり約40万人のお客様にご利用いただいている。開業後から現在に至るまでの「営業」の軌跡を、販売体制の強化・観光施策
という観点からご紹介したい。
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東海道新幹線の「運輸」の50年 |
古橋 智久:東海旅客鉄道株式会社 新幹線鉄道事業本部運輸営業部長
東海道新幹線は、昭和39年10月に開業し、現在50年目に入った。開業以来、56億人もの多くのお客様にご利用いただき、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を結ぶ
日本の交通の大動脈として経済成長を支え、世界の高速鉄道のトップランナーとしての地位を確個たるものとしてきた。
この間、営業列車の脱線・衝突事故「ゼロ」の記録を更新し続けるという非常に高い安全性に加え、運行1列車あたりの平均遅延時分も、自然災害などによるものも
含めて0.9分(平成25年度実績)という非常に高い正確性を確保している。
これらは、構想・開業から今日に至るまで、CTCによる運行管理、ATCによる列車制御、車両や地上設備などのハード面での弛まぬ改良に加え、運行に携わる人の
高い技術・技量・規律規範意識や組織の総合力を高めることでなしえたものと考えている。
今般、開業50周年を迎えるにあたって、幾多の困難を乗り越えてきた諸先輩方の取り組みに対し改めて敬意を表するとともに、その歴史を振り返ってみたい。
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東海道新幹線の「車両」の50年 |
臼井 俊一 :東海旅客鉄道株式会社 新幹線鉄道事業本部車両部長
昭和39年10月1日、東京〜新大阪間で開業した東海道新幹線は、平成26年10月に開業から半世紀を迎える。開業後半世紀にわたって列車事故による
旅客の死傷はゼロ、運行1列車あたりの平均遅延時間は0.9分(H25年度)と、極めて安全かつ安定した輸送を実現している。
この極めて高い安全性と安定性は、平面交差のない高速列車専用の軌道と、速度を自動的に制御して衝突を防ぐ自動列車制御装置(ATC)により実現している。
また、開業以来、今日に至るまで、新幹線輸送に携わってきた多くの社員の日々の積み重ねが、東海道新幹線の安全性・安定性を絶えずブラッシュアップさせてきた。
安全で安定、かつ快適な車両を常に提供するという使命を果たすため、絶えず車両の保守データに関心をもち、設計にフィードバックすることで、設計手法や
ノウハウ等を築いてきた50年であった。
本稿では、東海道新幹線の安全性・安定性を支えてきた「車両」の50年を振り返る。
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東海道新幹線の「施設」の50年 |
松嵜 道洋:東海旅客鉄道株式会社 新幹線鉄道事業本部施設部長
東海道新幹線の開業以来「施設」の技術は、更なる速度向上や輸送力増強等の施策を通じて進化を繰り返してきた。また、「施設」に関わる設備においては、
ハード、ソフトの両面から自然災害や地震に対する強化を図ってきた。そして現在は「予防保全」の考えを基本に50年が経過した構造物の経年劣化に向けた
対策(大規模改修工事)も進めている。
このように、安全かつ安定した質の高い線路構造物を提供するという使命のもと、これまでも効果的な保守を目指して取り組んできたが、今後もその使命や目指す
ところは変わりはない。本稿では、東海道新幹線の「施設」が歩んできたこれまでの50年と今後の展望を紹介する。
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東海道新幹線の「電気」の50年 |
竹内 寛人 :東海旅客鉄道株式会社 新幹線鉄道事業本部電気部長
昭和39年の開業以来、東海道新幹線は我が国の大動脈輸送を担い、約56億人のお客様にご利用いただいている。また、乗車中のお客様が死傷する
列車事故ゼロを更新し続けている。
東海道新幹線の電気設備は、構想段階から最新の技術進歩を取り込みながら進化を続け、世の中の技術を先導してきた。また、その電気設備を管理、運用する
技術についても地道な改善を続け、今日に至る。これらハード面とソフト面の技術を高い次元で両立させていることが、東海道新幹線の「電気」の強みであり、
東海道新幹線ならでの「文化」である。
以降、これまでの50年の進化の過程について簡単に振り返る。
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山陽新幹線の歩みと北陸新幹線の開業について |
吉江 則彦 :西日本旅客鉄道株式会社 取締役兼常務執行役員 鉄道本部副本部長 鉄道本部新幹線統括部長
山陽新幹線は1972年に新大阪から岡山まで、1975年に博多まで開業し、既に開業していた東海道新幹線との直通運行により東京〜博多までの大動脈として約24億人のお客様を
お運びし、産業、経済の発展や国民生活の向上に貢献してきた。開業以来、乗客の死亡事故ゼロを継続し、高い安全性を維持するとともに、現在では最高速度300km/hの営業運転
(開業時210km/h)を行うに至っており、世界トップクラスの水準で高速性能を有している。ここでは、これまでの山陽新幹線を振り返るとともに、2015年3月に開業を予定している
北陸陸新幹線の概要について紹介する。
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JR東日本の新幹線の歴史 |
川野邉 修:東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役
当社の新幹線ネットワークは東北、上越、北陸(長野)、山形、秋田と5線区5方面に広がり、当社管内の主要都市と東京を結んでいる。
これらの都市間輸送ネットワークの拡充とともに、高速新幹線車両導入時に伴うスピードアップにより対抗輸送機関との競争力を強化し、新幹線の商品価値を高めてきた。
また、当社はこれまで8形式の新幹線車両の開発をはじめ、自動分割・並行装置の整備や2階建て新幹線の投入により、必要な輸送力の確保に努めてきた。現在では、グランクラス
など新しいサービスの提供もはじまっている。
これからも360km/h運転などの速度向上を目指しながら、安全で安定した輸送を追究し続け、お客様に楽しい旅をしていただけるよう、よりよいサービスを提供していきたい。
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九州新幹線全線開業の効果 |
小林 宰 :九州旅客鉄道株式会社 取締役 鉄道事業本部副本部長兼鉄道事業本部サービス部長兼運輸部長
九州新幹線鹿児島ルートは、九州を南北に貫く、九州の大動脈を担う路線であり、九州新幹線全線開業は九州とって交通地図を塗り替える大きな出来事であった。
この開業により、昭和34年の東海道新幹線の着工以来、52年の歳月を経て、北は新青森から南は鹿児島中央まで日本列島が新幹線により結ばれた。
ここでは、九州新幹線全線開業の実績を振り返ることとする。
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[統計講座] 輸送密度から鉄道の本質が見える 「第6回 新幹線は輸送量を何割増やしたのか -東北・上越新幹線を例に-」 |
大内 雅博 :高知工科大学社会システム工学教室教授
要旨:東北新幹線(大宮・盛岡・新青森間)上越新幹線(大宮・新潟間)および北陸(長野)新幹線(高崎・長野間)の開業による輸送密度の増加量と増加率を調べた。
東北・上越新幹線開業前年の1981年度の輸送密度を基準として、1986年度および2013年度の新幹線と在来線(第三セクター化した区間を含む)の輸送密度の合計の
増加率を求めた。新幹線の開業により在来線を含むその区間の輸送量が増加したことが確認できた。一方、東京から遠ざかるごとに輸送量の増加率が徐々に低くなり、
新幹線の末端区間でその線区外からの旅客流入の無い場合には増加率が極めて小さいことが分かった。
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