インバウンドの変遷とその課題
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原 祥隆:一般財団法人国際観光サービスセンター常務理事
矢田部 暁:一般財団法人国際観光サービスセンター主任研究員
インバウンドの言葉が一般に知られるようになったのは、つい最近である。外国人旅行の意味で使われているが、日本への外国人旅行者の誘致については、その意味も世間では疑問視され、
観光関係でも知らない人が多かった。ところが、2003年のビジット・ジャパン・キャンペーンを機に、インバウンドが注目され始めた。中国人旅行者を主に「爆買い」による経済効果が明らかに
なるとともに、広い産業分野で、インバウンドに対する関心が一段と盛り上がってきた。今やステージは一段階上がり、観光立国として国の経済成長の柱となり、大いに注目される業態になった。
外国人旅行者誘致については、諸外国と同様に、国及び国に準じた機関、日本では観光庁と日本政府観光局(JNTO)が中心となり、運輸関係、観光関係、企業等の民間の協力を得ながら一体となって進めている。
本論では、明治時代の西洋人の接遇から始まったインバウンドが、様々な時代を経て、今日まで成長拡大してきた変遷を、観光政策中心に主要出来事とともに述べた。また、日本の魅力の源泉は何か、そして、
外国人旅行者の誘致と受入対策は表裏一体であり、旅行者の満足度と好印象が、リピーターとなって戻ってくること等にも触れている。また、内面的な問題は把握しづらいが、インバウンドの拡大と訪日旅行者の
増加は、せんじ詰めれば日本の国際化であり、一般市民の内面的国際化を推進するキーであると考えている。特別なおもてなしは別として、一般の人が旅行者を暖かく親切に、それも裃を着ずに自然体で迎えられるのが、
島国の日本でインバウンドを継続的に着実に発展させていけるのではないかと思う。日本のインバウンドの変遷、日本の伝統文化等の魅力、外国人の受入対策や課題などインバウンドに関わる全体を、包括的にかつ客観的に述べるように試みたつもりである。
本稿は以下の5章である。
1.インバウンドの現状
2.インバウンドの変遷
3.外国人を引き付ける日本の魅力
4.国内の外国人の受入対策
5.インバウンドの課題
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「瀬戸大橋」と「明石海峡大橋」
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十川 道信:四国鉄道機械株式会社取締役会長
昭和63年に瀬戸大橋が完成し、鉄道と道路で四国と本州が結ばれた。その後、平成10年に明石海峡大橋の完成とともに淡路島を経由した高速道路が開通、さらに平成11年には芸予の島々を
経由してしまなみ海道が完成するところとなり、四国と本州は3ルートによって結ばれることになった。これらのルートは今日も大動脈として四国の経済を支えているがその役割も様々であり、
特に瀬戸大橋による鉄道と明石海峡大橋における高速バスは公共交通機関として四国〜関西間の旅客輸送を大きく2分することになった。私は平成4〜7年に四国旅客鉄道(株)の総合企画本部経営企画室長
として、平成8〜9年を鉄道事業本部運輸部長として、さらに平成12〜15年を経営企画部長として鉄道の輸送改善策を推進してきた。また一方で平成10〜11年は自動車事業部長を、また平成16〜21年を
ジェイアール四国バス(株)社長として自動車事業にも関わってきた。そして、現座はJR四国の鉄道車両の修繕を行い、かつ車両洗浄装置などの鉄道関連設備を制作する四国鉄道機械(株)の取締役会長に
就任している。言わば鉄道と高速バスの二つの分野の旅客輸送に密接に関わったことになり、今回改めて瀬戸大橋の鉄道と明石海峡大橋の高速バスの二つの旅客輸送についてその経緯を振り返ってみたい。
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鉄道による北陸〜東京、大阪間の所要時間と地域間関係変化の考察 |
廣田 良輔:昭和35年国鉄入社、旧・運輸省鉄道監査局施設課長、国鉄建設局計画課長、日本鉄道建設公団副総裁等を歴任
2015(平成27)年3月14日、北陸新幹線が金沢まで延伸され、開業を迎えた。東京〜金沢間454kmを3駅停車、最短2時間28分で結ぶ「かがやき」(1日1往復のみ)の評定速度は184km/h
となる。ほぼ等距離の東海道新幹線東京〜京都間476kmを3駅停車、最短2時間8分、表定速度223km/hで結ぶ「のぞみ」と比べても2割も低い速さである。運転最高速度 (東海道285km/h、北陸260km/h)
や路線の最勾配(20‰と30‰)の違いにもよるのだろうが 、51年も後に開業した最新路線の速さが8割に過ぎないのはいささか納得し難い。ただ今回の開業区間に限れば207km/h(所要時間1時間6分、
距離228km)で、既設東京〜長野間170km/h(所要時間1時間20分、距離226km)の影響が判る。環境や安全などの課題もあるだろうが、これから整備を進める骨格路線については建設規格の全面的な検討の要があろう。
北陸新幹線の金沢開業によりこれまでの越後湯沢乗換を伴う上越(幹)、北越急行線、北陸本線による「とき」「はくたか」に比べ、東京〜金沢間は1時間19分短縮され2/3になった。
北陸の富山市は筆者の生まれ故郷である。高校を出るまで同地で暮らし、大学在学時の昭和30年代前半には学期ごとに富山〜上野間をSLが牽く夜行列車で一晩かけて往復していた。北陸新幹線では乗換なしの2時間12分である。
そこで鉄道開業以来の富山〜東京間、富山〜大阪間の連絡ルート形成と所用時間の推移などを調べ、地域間の関係を考えてみることにした。
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スマートフォンを活用した列車内のお客様への案内強化 |
児島 邦昌 :西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 IT本部長
西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)では、グループ中期経営計画2017を策定し、「安全」「CS」「技術」の3つを基本戦略に掲げ到達目標を設定し
取り組んでいる。とりわけ「CS」の向上にあたっては、毎年実施している「お客様満足度調査(5段階・社内調査)」において全項目平均「4.0以上」という
目標を掲げ取り組みを進めているところである。お客様満足度調査において特に評価が低い「列車遅延時の情報提供に関して」が、スマートフォンを活用した
取組により、大きな成果を挙げることが出来たので、その内容について紹介すっる。
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[鉄道施設探訪記] 「第2回 岡山駅第4乗降場跨線橋階段を訪ねる」
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
岡山駅第4乗降場の東端にある跨線橋の上り階段は、階段と跨線橋部分をラーメン構造として一体化し、柱のない階段下のスペースを確保した点にその特徴がある。現在でも乗降場の限られた空間を阻害する階段の柱の処理は厄介であるが、鉄筋コンクリートアーチ構造を採用することによってこれを解決し、あわせてデザインとしても優れた構造物を実現した。
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[速 報] 鉄道統計(平成26年度) JR・関連機関
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鉄道に関する基本数値(社別の線区数、駅数、運輸成績、社員数、損益計算書、貸借対照表等)を各種資料から集約した統計資料です。 JR各社だけでなく、大手民鉄、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の情報も一部掲載しています。
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