[特集] 渋谷の再開発事業 T 渋谷駅周辺再開発の経緯と教訓
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森地 茂:政策研究大学院大学政策研究センター所長
渋谷駅とその周辺地区の開発は長年の課題であった。検討のための最初の委員会が設立されたのは40年以上前であるが実現しなかった。鉄道、道路、河川、バスターミナル、百貨店、
地下街、周辺商業地などの全面的な改築で、物理的にも、資金的にも多くの困難があり、国、東京都、渋谷区の多くの関係部局、警視庁、関係企業、商店街や住民など多様な主体の合意形成
なくして実現不可能だからである。
筆者が運輸省、建設省、鉄道3社の方々にこのプロジェクトの実現を呼びかけたのは、阪神淡路大震災を経験した危機感からであった。今回の計画が実現にこぎつけられた背景としても、誰もが
東京にも迫りくる大震災への対応の必要性を理解していたことが大きかった。勿論、東横線と副都市線の相互直通の決定、道路と区画整理に関する行政の決定、そして巨大な費用の多くを鉄道3社
が負担するという決断がなされたことからこの計画が始まったのである。多様な事業のどれかでも合意形成が出来なければ全体が成立しないと言う”ガラス細工"のようなプロジェクトであるだけ
に、渋谷区長をはじめ、関係した方々の熱意なくしては、実現には至らなかったであろう。
本論は、この大事業の経緯と概要、そしてプロジェクトから得た今後の駅周辺大規模開発に対する教訓についてまとめたものである。
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[特集] 渋谷の再開発事業 U 東急グループによる渋谷開発の歴史と展望
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但馬 英俊 :東京急行電鉄株式会社 執行役員社長室長
東急グループは、創業以来、本拠地である渋谷を、交通事業及び不動産事業における”扇の要"に位置する重要拠点として開発してきた。東急文化会館をはじめ、東急百貨店
、東急プラザ渋谷、渋谷マークシティ、セルリアンタワーなど、さまざまな開発を通して渋谷の街のにぎわいを創出し続けてきた。
現在、東急グループでは、渋谷を「日本一訪れたい街」「エンタテイメントシティSHIBUYA」とすることを目指して、100年に一度とも呼ばれる大規模な再開発を進めている。
渋谷における、駅および駅周辺開発の歴史と、現在実施している再開発事業の展望についてご紹介したい。
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[特集] 渋谷の再開発事業 V JR東日本の渋谷駅周辺整備 |
新井 健一郎 :東日本旅客鉄道株式会社 執行役員 総合企画本部 品川・大規模開発部長
JR東日本渋谷駅は1885(明治18)年3月に日本鉄道会社の経営の下で開業し、2015(平成27)年で130周年を迎えた。
本稿は、その渋谷駅の改良工事の歴史と駅周辺の変遷について述べる。
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[特集] 渋谷の再開発事業 W 東京メトロ渋谷駅の変遷と駅改良工事について |
野焼 計史 :東京地下鉄株式会社 取締役
渋谷駅は、現在4社8線(京王電鉄(株)井の頭線、東京急行電鉄(株)東横線・田園都市線、東日本旅客鉄道(株)山手線・埼京線、東京地下鉄(株)銀座線・半蔵門線・副都心線)が結節する都内有数のターミナル駅である。
1885(明治18)年、日本鉄道(株)の開業を皮切りに、各路線が順次整備され、更に利用者数の増加に合わせて駅の通路や出入口の増改築や改修が繰り返されてきたことから、各路線間の乗り換えが分かり難く、利便性の低下を招いて
いるなどの課題を抱えていた。加えて、耐震補強の必要性やバリアフリー設備が整備されていない等、近年の社会的ニーズに合致していない状況であった。
一方、駅周辺には、主要幹線道路や地域の軸となる道路、バスターミナルなどの都市基盤が形成されているが、安全性・防災性の強化、交通需要への対応、利便性の向上などが求められていた。
これらを背景として、2009(平成21)年6月、渋谷駅街区基盤整備方針が策定され、東京メトロにおいては銀座線渋谷駅改良工事を実施することになった。
本稿では、銀座線建設や改良の歴史、半蔵門線・副都市線を含めた渋谷駅の変遷を紹介するとともに、現在実施している銀座線渋谷駅改良工事の概要について述べる。
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JR西日本におけるエコステーションのあゆみ
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岡村 栄子 :ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 環境デザイン部長
「環境の世紀」といわれる21世紀を生きる私たちは、鉄道事業において営業拠点である駅を環境に配慮した「エコステーション」として整備していくことで、持続可能な
社会資本の構築を進め、地域との連携を通じて環境意識の向上につなげていこうとしている。ここでは、西日本旅客鉄道株式会社(以下JR西日本)における「エコステーション」
整備の背景や事例をJR西日本グループ全体の取組みとして紹介し、未来の駅へ夢を馳せたい。
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[鉄道施設探訪記] 「第5回 京阪電気鉄道新京阪線(阪急電鉄京都本線)の地下線と松島寛三郎」
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
京都市の四条通りの直下を東西に貫通する阪急電鉄京都本線の地下鉄は、東京地下鉄道に続く日本で2番目の本格的な地下鉄道として1931(昭和6)年に開業し(厳密には1925(大正14)年に開業した宮城電気鉄道仙台駅や、1928(昭和3)年に開業した神戸有馬電気鉄道湊川駅のように1駅のみの地下線には先例があった)、関西では最初の地下鉄道となった。また、海外を含めて従来の地下鉄道は
地上に敷設された第三軌条から集電する方式が一般的であったが、1駅のみの地下線を除いて日本で最初に架空線式を用いた地下鉄道となり、一般の電車が地下線へ乗り入れる端緒となった。
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