COSMOSとATOSの変遷
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岡田 智基:東日本旅客鉄道株式会社 電気ネットワーク部システムプロジェクト主席
豊桝 誠:東日本旅客鉄道株式会社 電気ネットワーク部システムプロジェクト主席
当社(JR東日本)は、関東・甲信越地方から東北地方までの非常に広範囲なエリアで鉄道事業を営んでおり、お客様に安全で安定した鉄道輸送サービスを提供するため、全社員が一丸となって様々な取り組みを行っている。
新幹線や東京圏在来線においては極めて高い運転密度と複雑なネットワークを形成している。これらに対して、安全安定輸送を実現するためには、列車位置の把握やトラブル発生時の運転整理、お客様への案内等を一元化して
行うための運行管理システムが極めて重要であり、当社においては、新幹線では「COSMOS」、東京圏在来線では「ATOS」という名称のシステムを運用している。
本稿では、COSMOS、ATOSについて輸送管理のトータルシステムとして常に発展を続けてきたその変遷と、今後のさらなる展望について紹介する。
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二代目京都駅 --その設計思想と具体化--
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西城 浩志 :鉄道資料保存会『鉄道史料』編集長 京都大学鉄道研究会会員(OB) 元近畿大学教授
大正天皇即位式に備えて急遽改築された二代目京都駅について、貴賓室に偏らず、観光客や社寺参拝の一般乗客を重視した設計思想とその具体化を明らかにする。鉄道初期に
設置された大駅は、都市の発達と鉄道輸送の進展により行き詰まりを見せており、改革の必要に迫られていた。しかし、明治期における改築は、鉄道の機能のすべてを一つの駅に
盛り込んだままで行ったため、十分な効果を上げ得ていない。京都駅の改築においては、近代的な機能分離型にすると共に、営業を継続しつつ改築し、十分な駅前広場を確保する
ための設計方針が確立された。あわせて、ほぼ同時期に竣工し、多数の皇室関係者・貴顕紳士の利用が予測された、大日本帝国の顔とも言える東京駅との比較も行う。
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EUの共通鉄道政策と鉄道運営 --スウェーデンの事例からの考察--
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黒崎 文雄 :一般財団法人運輸調査局 主席研究員
1988年、スウェーデンにおいて上下分離を伴う鉄道改革が行われた。同国の鉄道改革は、国有鉄道に初めて上下分離を導入した大胆な改革であり、その後のEUの共同鉄道政策に対しても大きな影響を与えている。
スウェーデンで鉄道改革が行われるまでは、EU域内では各国が独自に交通政策を進めていた。しかし、マーストリヒト条約の締結を契機にEUは自らが主導するかたちで共通政策を進めるようになっている。1990年代はじめ
からは欧州単一市場の完成を目指し、鉄道を上下分離した上でオープンアクセスを促進する方針を政策の基本的な柱としている。
EUの共通鉄道政策の下での各国の鉄道運営は多岐にわたっているが、スウェーデンにおいては輸送事業者とインフラ管理者との関係が完全に上下分離されるとともに、インフラの管理は政府の責任と定義されている。また、
不採算の地域鉄道輸送は地域の公共交通局が(民間の)交通事業者に委託する形で運営が行われてきている。上下分離による国鉄改革後は、事業者間の調整が複雑になるなどの課題も抱えるようになったが、人口密度が低い市場
環境かかわらず、スウェーデンでは手厚い公的補助によって質の高い公共交通の運営が行われている。
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[鉄道施設探訪記] 「第8回 近畿日本鉄道・澱川橋梁」--関場茂樹畢生の大作--
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
近畿日本鉄道京都線の桃山御陵前〜向島間に架かる澱川橋梁は、単純トラスト橋としは現在でもわが国で最大支間・最大重量を誇る鉄道橋として1928(昭和3)年に完成し、2000(平成12)年には国の登録有形文化財に登録された。設計者は、関場茂樹(1876〜1942)という土木技術者で、民間の橋梁技術者として活躍したことや、鉄道分野の生え抜きでなかったこともあって、鉄道関係の文献でもその名が語られることはほとんど無かった。
今回は、在野の土木技術者として生涯を全うした関場茂樹と、関場が手掛けた畢生の大作である澱川橋梁について紹介してみたい。
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