JR西日本グループの物流事業の歩み
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宮崎 好弘:株式会社奈良ホテル代表取締役社長、 元・株式会社ジェイアール西日本マルニックス代表取締役社長
JR西日本の物流事業を担う(株)ジェイアール西日本マルニックス(以下、「マルニックス」という)は、1949(昭和24)年に設立された、日本国有鉄道(以後、「国鉄」という)の
鉄道小荷物扱所を運営する大阪鉄道荷物(株)を源としている。大阪鉄道荷物(株)は、発足後順次受託業務量を拡大させて宅配事業も展開していたが、1986(昭和61)年に鉄道の
特性を発揮し難いとして国鉄の鉄道荷物輸送が廃止されたことに伴い、収益の大部分を占めていた国鉄からの受託収入を喪失し、経営の危機を迎えるとともに、国鉄が民営分割化された。
このため、大阪鉄道荷物(株)は営業赤字の主要因であった宅配事業から撤退し、1993(平成5)年以降、鉄道資材業務、事業用品輸送、日本旅行のパンフレットの保管・発送業務、
ショッピングセンターの天王寺ミオの館内物流業務等により順次受託業務を拡大し、1996(平成8)年には経常黒字達成、翌年JR西日本の出資(JR西日本グループ会社化)を機に現在の
社名に変更した。
その後も、(株)ジェイアール西日本伊勢丹の京都店(以後、「京都伊勢丹」という)の百貨店物流業務、現金輸送業務等により事業の拡大を図り、さらには、駅・列車ごみリサイクル業務、グループ内で
発生する古紙を再利用して駅・列車のトイレで使用するトイレットペーパーへのリサイクル業務、PCB廃棄物の無害化処理事業等の環境ビジネスにも展開を図った結果、2016(平成28)年度の売上高は
大阪鉄道荷物時代のピークである68億円を大きく上回る88億円に達した。
このようにマルニックスは、共同輸配送等による業務効率の向上、環境ビジネス(「静脈物流」)の推進、倉庫容量の拡大等による独自ノウハウを活かした物流事業の展開により業績を
伸ばしてきており、今後は、同社は単なるトラック輸送業務から脱却し、物流センター等の倉庫容量を活用する物流業務、他社にはないノウハウを活用する物流業務へシフトすることを
目指して事業展開を図ることとしている。
その特色のある物流に対する取り組みを紹介する。
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鉄道博物館 拡張リニューアルの概要
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宮城 利久 :公益財団法人東日本鉄道文化財団 鉄道博物館館長
鉄道博物館は今年7月5日に新館をオープンする。このことを2月14日、JR東日本と共同で発表した。
これにより、展示面積は現在の1.3倍となり、展示が大幅に拡充するだけでなく、課題であったレストランやショップの拡張、インフォメーションの強化、案内サインの刷新、多言語対応などのサービス向上も
併せて行い、新しい博物館として生まれ変わることになる。
また、本館のリニューアルは2017年より、部分ごとに順次行ってきており、既にオープンしているものも複数ある。拡張リニューアルは正に現在進行形の状況にある。
本稿では、この拡張リニューアルの経緯や概要について具体的にお伝えすることとしたい。
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東武鉄道「SL復活運転プロジェクト」
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浜田 晋一 :東武鉄道株式会社鉄道事業本部 SL事業推進プロジェクト部長兼計画管理部長
日本有数の観光エリアである日光・鬼怒川エリア。東武鉄道では、同エリアを重点エリアの一つに位置付け、地域の活性化に資する様々な施策をグループ一丸となって実施している。
その一つとして推進しているのが、昨年8月にSL「大樹」として営業運転を開始した「SL復活運転プロジェクト」である。
蒸気機関車(SL)の復活運転という鉄道会社ならでの施策で、SLを観光資源として地域活性化を図っていくとともに、SLの復活運転により鉄道産業文化遺産の保存・活用ならびに
鉄道技術の継承を行っていくことを目的としている。
しかしながら、SLの運転は当社では約半世紀ぶりのことであり、SL運転に係るノウハウは何も無いことから、そのノウハウを所有する全国の鉄道会社から多大なるご支援・ご協力を
いただくとともに、SLを「地域の宝」としてもらうべく、沿線地域の方々と寄り添いながら本プロジェクトを推進している。
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[解説] 交通統計:鉄道距離計算と普通旅客運賃関数 --数々の工夫、しかし細かすぎる体系--
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松原 望 :東京大学名誉教授
交通の統計の基礎は距離であるが、距離とは遠い、近いの程度である。これは数字で表され、統計が成り立つ。交通機関による運送では、その距離が長いほど運賃が高くなるのは当然であるが、「長いほど」とはどう長いのか。
まず、「距離」を定義しなくてはならない。距離は幾何学的・数学的問題と、どの距離をとるかの問題に分かれる。前者は大局的でおおむね問題が少ないが、後者は意外に複雑な問題が多く、些末に見えてもそれをクリアしないと
実質のない分析になりがちである。というのも、鉄道運送は物理的には線形であるが、システムとしてネットワークを構成し、利用者の経路に対する需要の多様性、運送契約の細かい縛り、鉄道運送の技術的煩雑さ(航空、海運、道路に比してはるかに煩雑)
が細かくかつ複雑に絡み、モンスターの様相を示し、しかも各要因のsensitivityが高い、この複雑さは鉄道という国家事業の長い歴史的要因が蓄積した性質上やむを得ないものである。
その上に運賃決定システムが設定される。ここは市場的決定および公租公課さらには公共経済学に関わる交通経済の分野となるが、筆者には専門的学識はないので、もっぱら数量あるいは統計による個別記述により、論題を整理し課題を析出してゆくものとしよう。
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[鉄道施設探訪記] 「第11回 三人の井上勝」
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
「鉄道の父」と呼ばれる井上勝の銅像は、東京駅の復元工事と東京駅前広場の整備工事でしばらく不在となっていたが、丸の内駅前広場の整備工事が完成し、2017(平成29)年12月に東京駅頭に再びその姿を現した。この井上勝の銅像はこれまで三体が制作され、うち二体が現存している。東京駅に井上勝像が復活したことを機会に、三体の井上勝像について、その沿革などを紹介してみたい。
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鉄道関係情報・3
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荻野 隆彦:一般財団法人研友社
海外の鉄道関係の情報を紹介しています。
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