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交通と統計 2018年7月(通巻52号)



2018年7月25日発行
定価2000円(税込み・送料別)
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TRAIN SUITE 四季島 運行1年を振り返って
  
内山 尚志うちやま たかし:東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 営業部 次長(観光流動創造/インバウンド・地域連携担当)

 当社が運行するTRAIN SUITE 四季島は、本年5月に運行開始1周年を迎えた。
 運行開始から1年間で約2,500名のお客様にご乗車いただき、リピーターの方もお見受けするようになってきた。TRAIN SUITE 四季島の旅への申込倍率は平均で約6倍と、全ての 出発日において申込者多数のため抽選を行っており、お客様の認知を得て好評を博している。
 本稿では、TRAIN SUITE 四季島の運行開始までの軌跡と、運行開始して1年の状況を述べる。
JR西日本お客様センターにおける「これまで」と「これから」のCS(顧客満足)の歩み 
  
多田 真規子 ただ まきこ:西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 近畿統括本部副本部長兼神戸支社長
山口 毅 やまぐち つよし:株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ 総務企画部担当課長

 2017年4月に民営化30年を迎えたJR西日本において、今やCS(顧客満足)は重要な経営戦略となっております。国鉄時代と比べ、JR西日本のCSに対しての認識は大きく変化してきており、その中で 従来の駅係員等が行う「対面」での接客はもちろん、情報通信手段の発展による、電話やメールといった「非対面」の接客も重要度が増してきています。その非対面接客を専門とする「JR西日本お客様センター」が 設立された経緯や沿革をはじめ、その規模や業務範囲の拡大、また多くのお問合せに対応するために導入された専用のシステム等をご紹介します。また、今後のお客様のニーズによって変化していくCSや、IT技術が 進んでいくことによる新しいチャネル(窓口)や働き方について、JR西日本が行った実証実験の結果を元に、これからのJR西日本お客様センターの役割を考えていきたと思います。
Railway development in Finland and the ideas under evaluation of future challenges 
  
Dr.Markku Pesonen  マルッカ ペソネル:元・フィンランド国鉄旅客局長、 前・VRグループ(フィンランド鉄道)技師長

 (要旨) フィンランドにおける鉄道の発展と将来構想
フィンランドの鉄道は1862年に創業した古い歴史を持ち、100年前にすでに今日の鉄道網の65%を完成させていた。鉄道は、地域開発と産業に重要な役割を果たしており、その戦略的な 輸送は、内陸と港湾を結ぶ森林資源と重工業製品の輸送である。また、フィンランドとロシアの国際輸送が、両国の経済に対し重要な役割を果たしている。
 フィンランドの鉄道は、当初から最高速度を80kmとする高い水準で建設された。蒸気とディーゼル機関車により列車が牽引された時代に、最高速度が120kmまで引き上げられ、1980 年代になると電化によりこれが140kmまで向上した。VR2012プログラムにより幹線の最高速度が160kmとなり、今日では200〜220kmに達している。
 蒸気運転の時代には、多くの労働力を必要としたが、内燃化、電化の進捗によって、大幅に省力化が進んだ。営業キロ当たり従業員数は、蒸気機関車の時代に40人であったが、ディーゼル 機関車と気動車になって35人となり、電気機関車と電車になると20人まで縮小した。2016年には、ユニット化された電車により、営業キロ当たり従業員数は11人となっている。
 蒸気時代に従業員一人当たりの人トンキロは20万人トンキロ(年間値、以下同じ)であったが、内燃化後にはその二倍の40〜50万人キロトンとなり、電化後の2016年には200万人キロトン まで力強い増加を示した。
 経営面では、1989年までフィンランドの鉄道は、政府に属し国の機関の一部として機能していた。1990年に国が所有する新しい公企業がつくられ、通常の株式会社と同じ運営に変わった。
 1995年7月には、鉄道のインフラストラクチュアと鉄道ビジネスが分離され、交通省の下にフィンランド鉄道機構を置いて、インフラストラクチュアの管理を始めた。一方、鉄道ビジネスについ ては、輸送、建設、保守を担うVRグループが政府所有の株式会社として発足し線路使用料をフィンランド鉄道機構に支払うようになった。
 2010年には、鉄道、道路、港湾を管轄するフィンランド交通庁と、道路、鉄道、航空、海運に関する安全を担当するフィンランド交通安全庁が発足した。
フィンランドは、1995年にEUに加盟したので、これにより、交通と鉄道に係るEUの指令、法令、規制の影響を受けることとなった。最も大きな影響は、競争政策の導入とEU鉄道システムとの 技術面での調和であった。公正な競争条件を確保するために、トラフィック・コントロール(列車ダイヤ設定)がVRグループから分離され、2015年からフィンランド交通通信省の管轄下で フィンレール社が発足した。
 鉄道における競争は、2007年から貨物輸送で始まった。旅客輸送については、ヘルシンキの通勤輸送が入札のプロセスに入っており、2021年に契約を結ぶことが目的となっている。政府は、 鉄道の長距離旅客輸送についても、2026年を目標として契約による市場開放を目指している。
 交通通信省は、競争者が公平に車両、保守、不動産へアクセスできるように、競争入札の詳細を決めるワーキンググループを設置しており、VRグループ株式会社を、車両、保守、不動産、鉄道輸送の 4社に分割する方針である。環境にやさしい鉄道ネットワークを充実する計画であるTEN Tが進行中である。これには、高速列車によるトゥルク(古都、人口30万人、都市圏規模3位)・リンク、タンペレ (人口33万人、都市圏規模2位)〜ヘルシンキ(首都、人口61万人)空港間の幹線輸送力増強が含まれている。また、ヨーロッパ鉄道ネットワークのボトルネックになっているヘルシンキ〜タリン(エストニアの首都) 海底トンネル、北極海に達する北極鉄道について研究を進めている。将来的には、ロシア鉄道との接続を改良して、シベリア横断とシルクロードへの連絡を視野に入れている。われわれは、地球温暖化と 戦う挑戦的な時代に生きており、鉄道はその重要なロールプレイヤーであり、これらのプロジェクトを温暖化に対する有効な手段としなければならない。

[鉄道施設探訪記]  「第12回 日本最初の鉄道トンネル・石屋川トンネル跡を訪ねる」
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 日本のトンネル技術は、世界最長の青函トンネル(当時)を完成させるなど、今や世界のトップレベルにある。しかし、現在のレベルに達するまでには、難工事に果敢に挑戦し続けた先人たちの苦労があった。明治時代に日本にもたらされた西洋のトンネル技術は、日本特有の複雑な地質と地形に鍛えられて、世界的にも高い評価をうけるまでに進化した。
 その原点が、今回紹介する石屋川トンネルである。石屋川トンネルは現在の東海道本線住吉〜六甲道間(神戸市灘区/東灘区)に位置していたトンネルで、1873(明治6)年2月に長さ61.0mのトンネルとして完成した。ほぼ同じころ(1871年)、アルプスではフランス〜イタリア国境を貫いて石屋川の約200倍の長さを誇るモン・スニトンネル(延長12,220m/「フレジュストンネル」とも)が完成 しており、彼我の技術力の差は歴然としていた。
 日本の近代化トンネル技術の出発点となった石屋川トンネルとはどんなトンネルだったのか、当時の文献などに基づいて、その沿革や特徴などを紹介してみたい。

鉄道関係情報・4
  
荻野 隆彦おぎの たかひこ:一般財団法人研友社

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