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交通と統計 2018年10月(通巻53号)



2018年10月26日発行
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物流業の課題とJR貨物のその後
  
田村 修二たむら しゅうじ:日本貨物鉄道株式会社 代表取締役会長、一般社団法人日本物流団体連合会会長

 「交通と統計」2014年7月(通巻36号)で「JR貨物の過去・現在・未来」と題し、国鉄改革後の27年間を概観した拙文を掲載したが、30周年を過ぎ、32年を迎え たところで、物流業界全体の課題やJR貨物のその後の動きをフォローアップする形で、「物流業の課題とJR貨物のその後」と題して、寄稿させていただく。したがって これまでの経緯などについては通巻36号(64〜82頁)を参考にしていただきたい。
 まずは、JR貨物の最近の状況を説明する前に、物流業界が直面する課題について述べてみたい。その次に、JR貨物が「経営自立計画」でコミットした鉄道事業部門の 黒字化を達成したこと、現在は、次のステージとして連結ベースを基本とした「JR貨物グループ中期経営計画2021」を推進中であることを報告する。
東京2020大会の関わり方と鉄道が担う役割について
  
吉田 公 よしだ いさお東日本旅客鉄道株式会社 総合企画本部 経営企画部 東京2020オリンピック・パラリンピック推進室長

 東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下、東京2020大会)のオフィシャルパートナ(旅客鉄道輸送サービス)となったことを契機に、当社における 取組みの方向性を示す「JR東日本2020Project」を策定した。「東京2020大会運営の支援に向けて」・「東京2020大会開催気運の醸成をめざして」の2つを取組みの柱とし、東京2020オリンピック・パラリンピック開催地の 公共交通事業者として、東日本エリアに根差した企業として大会への貢献を果たしていくこととしており、本稿では、「JR東日本2020Project」に基ずく現在の当社の取組みについて、ご紹介することとする。
リニア・鉄道館のこれまでの歩み
  
天野 満宏 あまの みちひろ:東海旅客鉄道株式会社 リニア・鉄道館 館長

 2011年3月14日、リニア・鉄道館は名古屋市港区金城ふ頭(名古屋港)にJR東海の企業博物館としてオープンした。東海道新幹線を中心に在来線から超電導 リニアまでの実物車両の展示を通じて「高速鉄道技術の進歩」を紹介している。
 今回は、当館のこれまでの7年間を振り返り、開設に至る経緯をはじめ、博物館のコンセプトや運営体制、常設展示のレイアウトとその充実に向けた取り組みを記す。 また、オープン以降の来館者数の推移とその属性に関する特徴を明示すると共に、展示施設として重要な企画展の実施状況やイベント等の計画立案を行う学芸担当の 役割などを紹介する。さらには、博物館の使命として後世に鉄道遺産として遺すための史料収集や調査、保守、展示活用の進め方、周辺施設と連携した営業宣伝活動などを記す。
 最後に、現状において実施している諸施策を紹介すると共に、お客様にご来館いただき満足していただけるさらなる展望について、その一端を紹介する。
山陽新幹線のインフラ長寿命化の取り組みと課題 
  
松田 好史 まつだ よしふみ大鉄工業(株)顧問、西日本旅客鉄道(株)技術顧問、(前)西日本旅客鉄道(株)常務技術理事構造技術室長

 1999年に発生した山陽新幹線コンクリート構造物の早期劣化問題、いやゆる山陽新幹線コンクリート問題の発生以降、西日本旅客鉄道(株)(以下、JR西日本という)は、構造物の新たな維持管理体系を 構築し、インフラ長寿命化に向けた様々な取り組みを着実に推進してきている。その骨格は、構造物の変状原因や劣化進展状態に対応して最もふさわしい補修工法を選定できる補修工法選定フローの策定 、補修材料の現地性能確認試験実施と認定化、補修現場に常駐するコンクリート補修施工管理技士の資格認定と継続教育の3つに代表され、これらを通じて補修品質の向上を実証的に進めるとともに、技術開発や 人材育成にも取り組んできている。
 本稿は、インフラ長寿命化を進める場合の基本的な考え方と山陽新幹線コンクリート問題発生から得られた知見について概説するとともに、JR西日本が取り組んでいる山陽新幹線のインフラ長寿命化の取り組み と課題について報告するものである。
電気・ディーゼル両用車両のしくみと世界の動向 
  
秦  広 はた ひろし:公益財団法人鉄道総合技術研究所 車両制御技術研究部 主幹研究員

 電気・ディーゼル両用車両は1950年代には既に使われていたが、2000年代からフランスで急増し、イギリスでも大量発注されて一部が営業運転を始めている。 この両国より両数は少ないものの近年世界各国で発注が続き、日本でも「四季島」でこの方式が採用された。
 この方式のしくみを従来の車両と比較して説明するとともに、各国の状況を概説し、他の方式との得失、今後の発展の見通しなどを述べる。
[鉄道施設探訪記]  第13回 北海道の鉄道用赤煉瓦建築を訪ねて
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 北海道の鉄道の歴史は、1880(明治13)年に開業した手宮(小樽)〜札幌間の幌内鉄道にさかのぼることができる。この鉄道は、新橋〜横浜、大阪〜神戸、大阪〜京都に続く日本で4番目の鉄道であったが、北海道は未開の地で、明治政府は1869(明治2)年に開拓史を設置して、開拓事業を本格的に推進する体制を整え、鉄道は北海道の開拓に必要な交通機関ーいわゆるー「開拓鉄道」として 建設が進められた。
 特に石炭資源は、早い時期に開発が進められ、炭鉱のある幌内と、小樽港を結ぶ鉄道が最初に建設されることになった。北海道の開拓事業は、西部開拓によって国力を発展させたアメリカがモデルとなり、アメリカから技術者としてジョセフ・ユーリー・クロフォードを招いてその指導を受けたため、アメリカ製の機関車が輸入されアメリカ流の設計による橋梁が架設された。
 今回は、こうした歴史的背景を持つ北海道の地に残る鉄道遺産のうち、4箇所の赤煉瓦建築を紹介してみたい。

鉄道関係情報・5
  
荻野 隆彦おぎの たかひこ:一般財団法人研友社

 海外の鉄道関係の情報を紹介しています。
 
 
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