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交通と統計 2019年4月(通巻55号)



2019年4月26日発行
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四国・本州交流を担う本四備讃線(瀬戸大橋線)のあゆみ
  
矢田 栄一やた えいいち:四国旅客鉄道株式会社 常務取締役 総合企画本部長

 瀬戸大橋は国家プロジェクトとして約10年の歳月をかけて建設され、昨年開業30周年を迎えました。瀬戸大橋の開業により、本州・四国間を連絡船に乗り換える ことなく直接行き来できるようになったことで大幅な時間短縮効果が生まれ、鉄道の競争力が大き向上しました。会社発足間もない当社にとって鉄道運輸収入の増加に つながったほか、本州・四国間の交流人口拡大に大きく寄与することとなりました。本四三架橋時代の到来とともに、急速に整備が進められた四国内の高速道路ネットワークの 整備により、鉄道を取り巻く環境は厳しいものがありますが、当社にとって本四備讃線は今後も屋台骨であることに変わりありません。
 本稿では、瀬戸大橋の建設経緯から開業後30年間のJR四国の取り組みについて紹介します。
富山港線の路面電車化(LRT化)事業のあゆみ 
  
谷口 博司 たにぐち ひろし:富山市役所 路面電車推進課 指導官(再雇用)

 富山市では、まちづくりの理念を「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」とし、地域の拠点を「お団子」に、公共交通を「串」に見立てた「お団子と串」の 都市構造を目指している。富山港線の路面電車化事業は、その理念を先取りするリーディングプロジェクトとして進められ、その開業は本市のみならず全国の関係者に大きなインパクトを与えた。 開業から13年になるが、現在も多くの関係者が視察に訪れている。
 さて、路面電車化する前の旧JR富山港線は、富山駅〜岩瀬浜駅間の延長約8Kmの単線電化路線であり、利用者数はピーク時の半分以下に落ち込み、その存続が危ぶまれていた。また、富山駅 周辺では2001(平成13)年には北陸新幹線が富山駅まで事業認可され、さらに2003(平成15)年には在来線の高架化が決定したことから、利用者減少に苦しむ富山港線の将来を含め、本市のまちづくりの課題となっていた。
 そこで本市は、富山港線をJR西日本から引き継ぎ、将来富山駅の南側を走る市内電車との接続を前提に富山港線を路面電車への転換を図ることで、その再生を目指すこととした。まず、運行事業者となる 第3セクター「富山ライトレール(株)」を設立した。事業形態は、同社が運賃収入で運営を行い、富山市が施設の建設・維持管理を負担する公設民営の考え方を導入し、上下分離に近い役割分担を行うことにより、経営の 健全化を目指した。また、利用者目線に立ってサービスの質を格段に向上させることに加え、デザイン等にも配慮することで、より魅力的な公共交通となるよう再生を図った。日中は15分間隔のパターンダイヤを基本 とし、駅を増設し、運行本数をJR時代の3.5倍に増便するとともに、システムをLRT化した。計画着手から3年後、2006(平成18)年4月に富山港線は全国初の本格的LRTとして開業した。開業前と開業直後の利用者数の変化を 比較すると、平日は約2.2倍に増加し、休日は約4.7倍に増加した。その後も、全体的には概ね順調に推移しており、富山ライトレールの収支は、赤字の予想から一転、開業当初から黒字となり嬉しい誤算となった。
 現在は、更なる利便性の向上を目指し、2019(令和元)年度末を目途に富山駅の南側を走る市内電車との接続・一体化を進めている。
JR西日本の観光列車 
  
室 博 むろ ひろし:西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 営業本部長

 現在、全国各地で観光列車が運行されており、テレビをはじめとしたマスメディアに取り上げられる機会も多く、鉄道への関心を高めるきっかけのひとつとなっています。
  本稿では、JR西日本における観光列車の取り組みおよび現在運行している主な観光列車の概要について紹介します。
観光列車「しまかぜ」の開発経緯と営業後のあゆみ
  
深井 滋雄 ふかい しげお:近畿日本鉄道株式会社 鉄道本部企画統括部技術管理部長(車両) 
西本 剛志 にしもと たけし:近畿日本鉄道株式会社 鉄道本部企画統括部営業企画部課長 

 近畿日本鉄道(以下、「近鉄」という)の観光列車「しまかぜ」は2013年3月に運行開始し、大阪・名古屋の各ターミナル駅から伊勢志摩地域への観光利用を中心に 多くのお客様にご利用いただき、2014年10月には京都発着便も増発しました。2017年9月には100万人のご利用者数を達成し、運行6周年を迎えた現在でも満席近い状態で、繁忙期 には予約が取りづらい状態が続いており、大変ご好評をいただいています。
 本稿では、開発までの経緯と営業運転開始後の状況について紹介します。
[鉄道施設探訪記]  第15回 大大阪の地下鉄と清水熙
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 大阪市高速電気軌道・心斎橋停留場のコンコースの壁面に「清水熙君之像」とあるレリーフが掲げられている。乗降客の多い停留場で、それほど目立つ場所ではなく、書かれている撰文も難解なので、立ち止まって見る人もほとんどいない。 しかし、その横にある掲示板によって当時の関一せきはじめ市長ともに大阪市営地下鉄の実現に陣頭指揮をとった人物であることと、その功績を讃えるために退職後に有志によって寄贈されたことなどが理解できる。今回は、この清水熙しみずひろしという 一般にはあまり知られてない技術者と地下鉄のかかわりについて紹介してみたい。
鉄道関係情報・7 
  
荻野 隆彦おぎの たかひこ:一般財団法人研友社

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