東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた東京メトロの取組み
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中野 宏詩:東京地下鉄株式会社 鉄道本部オリンピック・パラリンピック推進室長
東京地下鉄株式会社(以下、「当社」という)は現在、企業理念「東京を走らせる力」の実現を目指し、「安心=安全+サービス」の考えのもと、すべてのお客様に
安心してご利用いただけるように、日々の安全・安定運行はもとより、ハード・ソフトの両面で様々な取り組みを進めているところである。
「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下「東京2020大会」という)は東京・日本をさらに活性化させる、また将来の東京の発展・創造に繋がる世界的
イベントであり、まさに、当社の企業理念「東京を走らせる力」を示すことができる機会と捉え、東京2020オフィシャルパートナー(旅客鉄道輸送サービス)として東京2020大会
の成功に、交通の面から貢献していきたいと考えている。本稿では、東京2020大会に向けた当社の取り組みについてご紹介することとする。
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無線式列車制御システムATACSについて
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八木 圭介:東日本旅客鉄道株式会社 電気ネットワーク部ATACS-PT課長
大上 真平:東日本旅客鉄道株式会社 電気ネットワーク部ATACS-PT主席
東日本旅客鉄道(株)では、ICTを利用した列車制御システムの変革を目指して、従来の列車検知方式である軌道回路ではなく無線による情報通信技術を活用した、より安全でシンプルな
列車制御システムATACS(Advanced Train Administration and Communications System)の導入を進めている。膨大で複雑な地上設備からの脱却というコンセプトのもと、1995年よりATACSの
実用化に向けた開発に着手し、2011年10月に1号線区として仙石線あおば通〜東塩釜間において実用化した。その後、2014年12月には仙石線同区間にて、ATACSによる踏切制御機能の導入を
行った。無線による踏切制御は、本システムが世界初である。さらに2017年11月には、首都圏である埼京線池袋〜大宮間において実用化した。本稿ではATACSの開発段階から現在に至るまでの実績についてご報告する。
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広島地区への新保安システム(D-TAS)の導入について
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中野 浩之 :西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 電気部 次長
西日本旅客鉄道株式会社は在来線鉄道における新しい保安システムを開発した。このシステムは、信号機や曲線・分岐器等の線路条件に関する情報をデータベース化して
あらかじめ車上装置に登録し、地上子からの情報とデータベースを照合して自分の現在位置を認識し、車両の速度発電機や地上子からの情報により走行位置を補正しながら走行する。
これにより既存のシステムより地上設備の簡素化を図りながら連続的な速度照査はもちろんのこと、様々な運転支援が実現できる車上主体の保安システムである。
このシステムは「D-TAS(Database oriented Train Administration System:データベースを用いた列車管理システム)」と名付け、広島地区に新製配置される227系電車「レッドウイング」の
投入にあわせて、地上工事が完成した山陽本線西広島〜岩国間にて2018年5月20日より開始して約1年が経過したが、大きなトラブル等もなく順調に稼働している。D-TASの開発・導入に至った経緯や
開発状況・システム概要および使用開始後の運用実績、課題、今後の展望について報告する。
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訪日外国人数の現状とグローバル時代の多様性を受け入れたホテルの接遇
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湊 和則 :株式会社ジェイアール西日本ホテル開発代表取締役社長
訪日外国人数(以下、インバウンド)は、2011年の東日本大震災時急落したものの、その後急速に回復し、2018年は過去最高の3,119万人を記録しました。2018年は6月の大阪北部地震、7月の西日本を中心とした
豪雨、9月に台風21号や北海道胆振東部地震が発生し、台風21号の被害を受けた関西空港も閉鎖するなど、西日本の観光需要に大きな影響を与える天災が続きましたが、日本政府観光局(JNTO)が取り組む大規模
キャンペーンやDMO(観光地経営組織)・自治体などの継続的なプロモーション効果で訪日外国人数全体は依然好調に推移しています。
国際文化観光都市京都の玄関であるJR京都駅に直結する「ホテルグランヴィア京都」(以下HG京都と記します)は、JR西日本ホテルズのフラグシップホテルです。このHG京都の延べ宿泊者に占める外国人比率(売上ベース)は、この
10年で8.2ポイント(2009年度27.1%→2018年度35.3%)上昇し、外国人の平均客室単価(ADR)は、3,254円プラス(2009年度18,936円→2018年度22,190円)になるなど、インバウンドの増加を受けて好調な経営を続けています。
本稿では、HG京都のインバウンドに於ける急速な伸びを、日本全体や京都のインバウンドの推移と合わせ振り返るとともに、それを戦略的に受け入れてきた「ホテルグランヴィア京都」の接遇についての取り組みと今後の展望について述べます。
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鉄道強靭化におけるJR西日本の斜面および土構造物の防災・減災の取り組み
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松田 好史 :大鉄工業(株)顧問、西日本旅客鉄道(株)技術顧問、(前)西日本旅客鉄道(株)常務技術理事構造技術室長
「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」、いわゆる国土強靭化基本法が2013年12月に成立した。また、同日、「国土強靭化政策大綱(案)」も示され、法的にも
政策的にも国土強靭化に向けて動き出した。国土強靭化の推進に当たってのハード面での重要な課題として、社会資本(インフラ)の戦略的な維持管理・更新と防災・減災の推進とが挙げられる。
西日本旅客鉄道(株)(以下、JR西日本という)は、1999年に山陽新幹線においてコンクリート問題を発生させて以降、構造物の新たな維持管理体系を構築し、インフラ長寿命化に向けた様々な取り組みを着実に
推進してきている。また、1995年1月に発生した兵庫県南部地震以降の地震対策、あるいは激甚化する自然災害に備えるための降雨対策など、防災・減災の推進にもソフト・ハード両面から取り組んできている。これらの
取り組みは、まさに鉄道強靭化の取り組みと言えるものである。
本稿は、JR西日本が取り組んでいる鉄道強靭化の諸施策のうち、防災・減災の推進に関する取り組みとして、斜面管理や降雨対策などの取り組みと課題について報告するものである。なお、防災・減災の推進における
地震・津波対策などの他の自然災害への取り組みについては、機会があれば、別途報告させていただきたいと考えている。
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WEST EXPRESS銀河について
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室 博 :西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 営業本部長
2019年3月にこれまで「新たな長距離列車」と呼称してきた列車の名前を「WEST EXPRESS 銀河」とすることを発表しました。今後は2020年春の運転開始に向けて更なる準備を進めてまいります。
本稿では、「WEST EXPRESS 銀河」の概要や設備等について紹介します。
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JR四国の観光列車の系譜
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藤本 聡 :四国旅客鉄道株式会社 取締役営業部長
来年で20周年を迎えるアンパンマン列車、予土線を走るしまんトロッコ、海洋堂ホビートレイン、鉄道ホビートレインの3兄弟、そして最近では本格的な「ものがたり列車」を
運行し、利用も好調に推移している。来年には3本目の「ものがたり列車」の運行を予定しており、「わざわざ乗りに来ていただける列車」が四国への誘客戦略の重要なコンテンツ
となっている。
四国観光の起爆剤として導入してきた観光列車。その導入の背景と展開した施策、そして今後の展望について述べる。
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富山軌道線(市内電車)の環状線化事業のあゆみ
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谷口 博司 :富山市役所 路面電車推進課 指導官(再雇用)
前号2019(平成31)年4月号で、富山市のまちづくりの理念である「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を先取りするかたちで進められた「富山港線の路面電車化(LRT化)事業の歩み」を紹介した。
今回は、これに引き続き「富山軌道線(以後「市内電車」と称する)の環状線化事業のあゆみ」を紹介する。
環状線化事業着手前の市内電車は、富山地方鉄道株式会社が富山駅の南側で営業しており、市民の足として親しまれていた。しかし、モータリーゼーションの進展に伴い、利用者数は右肩下がりの減少傾向となり、軌道線の
一部区間が廃止に追い込まれた。その結果、路線延長は1964(昭和39)年の約10.7Kmから1984(昭和59)年に約6.4Km(南富山駅前〜富山駅前〜大学前)に減少するなど、その経営状況は厳しさが増していた。
一方、「富山港線路面電車化事業」開業の概ね1年前の2005(平成17)年3月に「富山市総合的都市交通体系マスタープラン」が策定され、鉄軌道網の再構築として「LRTネットワークの形成」が位置付けられた。同年11月から半年間
「富山市内電車・環状線化計画検討委員会」で議論を重ね、2006(平成18)年に開業した富山ライトレール富山港線が市民に大好評であったこともあり、概ね3年後を目途に中心市街地を運行している市内電車の軌道を延伸、接続
することにより環状線化することになった。
環状線化事業の特徴は、@コンパクトナまちづくりの理念に基づき中心市街地活性化の主要事業に位置付けられたこと、A路面電車事業では全国初の公設民営の考え方に基づく「上下分離方式」を導入したこと、B施設整備に
あたっては、軌道施設・道路施設・街並み等をトータルにデザインしたことである。
右肩下がりの減少傾向だった市内電車の乗車人員は、2009(平成21)年環状線の開業により、右肩上がりの増加傾向に変化した。そして開業から8年目の2017(平成29)年度時点の乗車人員は、約40%増加した。これは、本市が人口減少や
超高齢化等の課題を抱えつつも、コンパクトなまちづくりの理念に基づき公共交通活性化のため「市内電車環状線化事業」等の施策を一体的に行った結果である。
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[鉄道施設探訪記] 第16回 日本煉瓦製造専用線と渋沢栄一(上)
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
改元に続いて紙幣が一新されるとかで、新1万円札の顔として明治の財界の元勲ともいうべき、渋沢栄一が選ばれた。最近の教科書がどうなっているかは知らないが、少なくとも筆者が教わった頃の教科書には登場しなかったように思うので以外な感がある(単に覚えていないだけかも?)、明治〜大正時代の財界を代表する人物なので、新紙幣の顔としては申し分ない人選だと思う。
今回は、新紙幣の顔となる渋沢栄一にちなんで出身地の埼玉県深谷市にあった日本煉瓦製造専用線の沿革と現状を二回に分けて紹介してみたい。
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鉄道関係情報・8
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荻野 隆彦:一般財団法人研友社
海外の鉄道関係の情報を紹介しています。
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