相鉄・JR直通線の開業を迎えて -神奈川東部方面線の概要と事業効果-
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竹下 昭博:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構工務部工務第一課課長
平手 知:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構工務部工務第一課総括課長補佐
鉄道・運輸機構は、現在、都市鉄道等利便増進法に基づき、神奈川東部方面線の整備を進めている。
神奈川東部方面線は、相鉄・JR直通線(相模鉄道本線西谷駅〜JR東海道貨物線横浜羽沢駅付近)と相鉄・東急直通線(JR東海道貨物線横浜羽沢駅付近〜東急東横線・目黒線
日吉駅)の二つの連絡線を整備するものであり、この連絡線を利用し、相鉄線とJR線、相鉄線と東急線が相互直通運転を行うことにより、横浜市西部地区及び神奈川県
中央部と東京都心部との速達性の向上や、広域鉄道ネットワークの形成が図られる。
このうち、相鉄・JR直通線については令和元(2019)年11月30日に開業する予定となっており、地域住民の開業に向けた期待が高まっているところである。
本稿では、神奈川東部方面線の概要と事業効果、及び整備スキームである都市鉄道等利便増進法について紹介する。
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JR西日本可部線電化延伸事業の歩み
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飯田 稔督:西日本旅客鉄道株式会社 広島支社副支社長
JR西日本発足時(1987年(昭和62年)4月)の可部線は、山陽本線広島駅から終点方へ一駅の横川駅を起点として、太田川の右岸沿いに北に延び、可部駅を経て
西に向かい、三段峡駅に至る営業キロ60.2Kmの単線路線で、横川〜可部駅間(営業キロ14.0Km)は直流1,500Vの電化区間、可部〜三段峡駅(営業キロ46.2Km)は非電化区間であった。
その後、2003年(平成15年)12月、可部線可部〜三段峡駅間については、鉄道の特性が発揮できないとし鉄道事業の一部を廃止した。一方、運行を継続した横川〜可部駅間は広島市北部方面の
公共交通の軸として多数のお客様にご利用いただき、地域に欠かせない路線となっている。
ところで、2017年(平成29年)3月、当社は利便性向上及び地域の活性化に資する交通体系を構築するため、一度鉄道を廃止した地域に電化延伸(可部〜あき亀山駅間営業キロ1.6Km)というかたちで
再び鉄道を走らせることとした。これに至る経緯や背景には沿線自治体をはじめとする地元の方々の強い思いがあった。
本稿では可部線の一部廃止を路線の成り立ちと併せて振り返るとともに、電化延伸事業の概要を述べる。
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JR九州のD&S列車の系譜
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堀 篤史 :九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 営業部営業課担当課長
JR九州(以下、「当社」という。)では、一般的に「観光列車」と呼ばれる”乗って楽しい列車”を、「D=デザイン」と「S=ストーリー」をあわせもった列車として、「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と
呼び、鉄道事業の大切な柱として運行しています。
本稿では、当社において「D&S列車」が生まれた経緯や、これまでの展開をご紹介するのとあわせ、そのうちのいくつかのD&S列車について、その運行までの開発経緯についても触れ、最後に
D&S列車の今後の展望についても述べたいと思います。
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「富山市の路面電車南北接続事業」概要と準備状況
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谷口 博司 :富山市役所 路面電車推進課 指導官(再雇用)
富山市周辺地区は、富山駅の開業以来長い間鉄道で南北に分断されてきた。この分断を解消し、合わせて交通結節機能の強化と都市機能が集積された、県都の玄関に相応しい顔を持つ富山駅周辺地区を
目指すことは県・市の悲願であった。このため、北陸新幹線建設着手を好機と捉え、これに合わせて富山駅周辺整備を進めてきた。
計画の概要は、北陸新幹線と在来線を高架化することに加え、駅前広場・道路・歩行者専用通路・路面電車等のインフラ施設を高架下(地上)に設置またはつなぐことにより駅の南北の一体化を目指している。
そしてこれらのインフラ整備に加え、都市機能の集積を図る民間活力の導入も並行してすすめられている。
これらの富山駅周辺の事業は、「富山市100年の大計」と位置付けられるものであり、今後、人口減少が予想される将来の県・市にとって不可欠な事業である。
この中でも特に、「路面電車南北接続事業」は、富山駅周辺整備事業の要である。富山市のまちづくりの理念であるコンパクトなまちづくりを進めるため、富山駅の南北でそれぞれ別々に進められた「富山港線路面電車(LRT)事業」と
「富山軌道線(市内電車)環状線化事業」の二つの重要なプロジェクトを富山駅の高架下の新停留場でつなげることにより、富山市の南北をつなぐ新しい公共交通軸の実現を目指すものである。また、富山港線路面電車化事業から
始まった富山市の路面電車ネットワークにとってこの南北接続は、コンパクトなまちづくりの当面の計画の総仕上げとなることから、富山市最重要施策と位置付けられている。
路面電車南北接続事業は、富山駅周辺の関連する事業とともに一体的に推進されており、総延長は約250m,北陸新幹線の開業に合わせて整備された南側「第1期事業」(約160m)と在来線の高架化事業とあわせて現在事業中の
北側「第2期事業」(約90m)に分けて施工しており、今年度末に完成の予定である。
この事業の完成により、富山港線と富山軌道線が接続一体化し、富山駅を中心とした全長15.2Kmの路面電車ネットワークが出来上がることから、路面電車の利便性が格段に向上すると期待されている。
本論文は、「南北接続までのコンパクトなまちづくりの実績と第1期事業の概要」を述べ、その後の第2期事業、開業、運行形態、体制、効果等は、別の機会に述べる。
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[鉄道施設探訪記] 第17回 日本煉瓦製造専用線と渋沢栄一(下)
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
煉瓦は、明治時代の西洋建築や土木構造物に欠かせない材料として、大量生産、大量消費の時代を先取りしたが、明治時代の末になると鉄筋コンクリート技術が導入され、より耐久性に優れ、地震にも強い構造として急速に普及した。ことに、1923(大正12)年の関東大震災で、煉瓦構造物が大きな被害を受けたことによりその動きは加速し、大正時代末期までにはほぼ完全に鉄筋
コンクリート構造へと転換することとなった。このため、煉瓦の需要は急速に衰退した。
今回は、煉瓦産業の衰退とその煉瓦製造専用線の廃止及びその廃線跡の現存する構造物を紹介してみたい。
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