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交通と統計 2020年7月(通巻60号)



2020年7月31日発行
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WATERS takeshiba 〜浜離宮を借景に、水辺を活かしたまちづくり〜
  
竹島 博行たけしま ひろゆき:東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部大規模地域開発部門 部長

 JR東日本グループでは、グループ経営ビジョン「変革2027」のもと「ヒトを起点とした新たなサービスの創造」に取り組んでおり、「CITY UP!」をスローガンに、多様な魅力あるまちづくりを推進している。 ここで紹介する『WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)』は、東京都港区竹芝地区で進めているラグジュアリーホテル・オフィース・商業・劇場等からなる都心の複合開発であり、”つぎの豊かさを生み出すまち”を ビジョンに掲げ、文化・芸術の発信機能を担う『劇団四季春劇場・秋劇場』、従来にない宿泊体験を提供するホテル『メズム東京オートグラフコレクション』などの特徴的施設を中心に、水辺と浜離宮恩賜公園を望む 立地環境を活かした新しいまちづくりを目指すものである。
 本稿ではその計画概要と、プロジェクトの経緯について述べていきたい。
横浜駅西口開発ビル計画 〜横浜の価値向上「YOKOHAMA LIVE STATION」〜
  
表 輝幸おもて てるゆき:東日本旅客鉄道株式会社 執行役員 事業創造本部 副本部長

 横浜駅は、1日平均約80万人、JR東日本管内で第4位の乗降人数を誇るターミナル駅である。その横浜駅西口において、当社では「横浜駅西口開発ビル計画(以下、本計画)」を推進しており、2020年6月に開業を迎える。
 本計画は、2008年に策定された当社の中期計画ビジョン「グループ経営ビジョン2020〜挑む〜」における象徴的なプロジェクトとして、また2009年に横浜市が制定した横浜駅周辺地区の大改造計画「エキサイトよこはま22」の リーデイングプロジェクトとして、それぞれ位置づけられたもので、商業・オフィスを主用途とする「JR横浜タワー」と、ホテルや「JR横浜タワー」の隔地駐車場を主用途とする「JR横浜鶴屋町ビル」の二棟からなる開発計画である。 本稿では、その開発計画の概要および経緯等について紹介する。
大阪・梅田エリアマネジメントの取り組みと今後の展開
  
春名 幸一 はるな こういち:西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 創造本部副本部長

 大阪・梅田地区は、日本有数の規模を誇る交通網をはじめとして、商業や業務機関のみならず、学術・文化など多彩な都市インフラやストックが集積する拠点である。一方で、エリアの発展の歴史は小さなエリア単位の開発によるところも多く、エリア全体 通して一貫するテーマがない点、鉄道や道路網がまちや歩行空間を分断し歩行者の回遊が欠如している点や、地下空間の発展などによる災害への脆弱性などが課題として指摘されてきた。こうした課題は同地区の関係者のみならず、関西経済圏においても大きな 関心事であったものの、高度経済成長期以降、首都圏への人口流出や少子高齢化を背景とした経済規模の縮小などの懸念を抱えつつ、関西大都市圏の各都市が誇る学術や文化資源などのつなぎ役となる経済界の対話の場や牽引役は不在であったため、課題解決が図れない状態であった。
 こうしたエリアの課題を解決すべく大阪周辺で大規模商業施設を運営している阪急電鉄株式会社・阪神電気鉄道株式会社・一般社団法人グランフロント大阪TMOと当社の4社で2009年に「梅田地区エリアマネジメント実践連絡会」を設立した。同団体は、充実した都市機能と、関西大都市圏 や関西国際空港などの各拠点とのネットワークを活かした競争力のあるエリアの確立を目指して活動を続け、これまで10年以上に及ぶ活動実績を築いた。エリアのブランデイングを支えるルールづくりや、賑わいや回遊を生み出すエリアイベント、オフィスワーカーを巻き込んだ防災啓発 など取り組み内容も多岐にわたる。これらの活動は、駅や商業施設をはじめとする当社施設の持続的な発展を支えるだけでなく、エリアの国際的な競争力向上にも貢献しており、当社が目指す「住みたい・訪れたいまちづくり」の実現に寄与するほか、地域との連携強化にも大きな役割を果たしている。
 本稿では、同団体の発足の経緯や具体的な取り組み、今後のまちづくりを通じた活動の展望を紹介することとしたい。
JR西日本グループにおけるホテル事業の概要
  
渡邊 紀之 わたなべ としゆき:(株)ジェイアール西日本ホテル開発出向 (執行役員 カンパニー統括本部経営戦略部長)

 日本国内ホテル事業の近年の歩みを振り返ると、とりわけシティホテルは、1991(平成3)年以降のいわゆるバブル経済崩壊、2002(平成14)年のサーズ、2012(平成24)年のマーズ の感染症の流行、2008(平成20)年のリーマンショックによる世界的な不況や、国内の大規模な自然災害など度重なる試練に見舞われ、長い低迷期を経験してきました。 しかし、この5年ほどは、政府の観光立国政策による訪日外国人誘致効果や、国内及び世界経済の安定等もあり、都市部をはじめ一部の地方では客室不足が常態化するなど活況を 迎えていました。しかし、2019(令和元)年頃からは、大阪や京都など大都市部においてホテルの開発・供給ベースが宿泊需要を上回る状況が出現したほか、近隣諸国との政治的な 関係の悪化もあり、訪日外国人の伸張もやや鈍化するなど事業環境に変調の兆しが見え始めていました。さらには、今年初頭からの新型コロナウィルス感染症の世界的なパンデミック により、日本のみならず全世界で外出自粛等の事態に発展し、経済活動が大きく停滞しており、真っ先に観光・レジャー産業や運輸業等は深刻なダメージを受けています。
 このような事業環境の激変により、資金繰りの悪化から事業継続すらままならぬホテル事業会社も出てきており、改めて世界情勢や経済環境の変化に直ちに影響を受けるボラティリティ (価格変動)の大きい事業であることを認識させられています。著者がホテル事業に携わった僅か20数年の間でさえ、日本経済のバブル崩壊から始まり、現在の新型コロナ感染症ショック まで、幾度となく深刻な経済危機に見舞われてきましたが、JR西日本グループのホテル事業各会社については、懸命の経営努力や経済活動の循環とともに、時間を要したものの復活も果たしてきました。 ただ今回の新型コロナ感染症後には、業界を取り巻く環境は大きく変化するものと予想され、変化を確実に捉えて適切なホテル事業戦略を検討していくことになると考えています。
 以下に、JR西日本発足から今日までの、JR西日本におけるホテル事業の取り組みについて振り返り、今後の展望を示します。
[鉄道施設探訪記]  第20回 坂本鎮雄と変革期の鉄道建築
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。

 鉄道建築は、1914(大正3)年に完成した東京駅で西洋の駅と比較しても遜色のない大規模駅舎建築を実現したが、その成果は辰野金吾と葛西萬司という部外の建築家の力量によりもたらされたものであった。当時の鉄道にも建築の専門家は在籍していたが、組織としては建設や保守管理にあたる土木技術者と同じ扱いで、職能として完全に独立していなかった。東京駅の建設を転機として建築の専門家が何人か採用されるようになったものの、 待遇面の不満などで定着せず、国有鉄道に建築課という組織が創設されるのは1920(大正9)年のことであった。
いっぽう、東京駅は古典的な様式建築の延長線上の建築として完成したが、すでに海外ではウィーン分離派(またはセセッション)に端を発する新興芸術運動が広がり、ウィーンのカールスプラッツ駅(オットー・ワグナー設計/1899)、パリのメトロ出入口(エクトル・ギマール設計/1900)などの新しい様式の鉄道建築がもたらされ、大正時代には日本の美術・建築界にも影響を与えていた。こうした鉄道建築の変革期に活躍した鉄道建築家が、坂本鎮雄さかもとしずおである。
   
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