JR東日本におけるコミュニケーション向上のためのシステムマネジメントについて 〜これまでの取組みからアフターコロナの新しい働き方へ〜
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佐々木 敬介:東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部システムマネージメント部門 部長
2019年度末以降の新型コロナウィルスCOVID-19(以下、「コロナ」という。)の感染拡大に対して、当社においても様々な「3密」対策をとる中、システムマネージメントにおいては
特にテレワーク環境の整備・強化が急務とされた。
お客様や鉄道設備に直接接する現業のウェイトが非常に大きい当社では、もとよりこうした事態など想定していなかった。遠方への出張、海外勤務やテレワークなどの、当社では一部の特殊な場面に対して、使用環境を徐々に
整備してきてはいたという状態だった。従って、突如急拡大したニーズに対し完全にタイムリーに応え切れたとは言えないが、何とか事業の遂行に著しい支障を招くことなく、この難局を乗り切ったと考えている。
これは、現関係者の「格闘」とも言うべき工夫と尽力、そして全社員の謙譲的な協力の賜物である。そして、これまでの社内統合オフィスシステム「Joi-Net」(「JR East Office Integration Networkの略)の整備・運用において、当初目的
こそコロナ対策でなかったにせよ、先人たちが仕掛けてきた様々な発想や目的の諸施策が開花し、イノベーティブに共振した結果だと感謝している。
現在最初の緊急事態宣言は解除されたが、コロナ感染はいずれ複数の波が来ると言われており、コロナ以外の想定外のリスク対策も含め、さらなる備えは必須である。されに「ウィズコロナ」「アフターコロナ」などと称するこれからの時代に
確実に起きる働き方の変革を見据え、的確なシステムマネージメントを構成しなければならない。
本稿では、以下のサマリーに沿ってこの間の取り込みの経緯と今後の展望について論じることとしたい。
1.鉄道現業でのタブレット端末の活用
2.「Office365]の導入によるコミュニケーションの活性化
3.社員が所持する業務デバイスの最適化とテレワーク環境整備の着手
4.コロナ感染拡大に伴うテレワーク環境の運用と緊急増強
5.「アフターコロナ」を見据えたシステムマネージメント戦略
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富山市の路面電車南北接続完成と運行の一元化へのあゆみ
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谷口 博司:富山市役所 路面電車推進課 指導官(再雇用)
富山市は、2008(平成20)年3月まちづくりのグランドデザインとなる「富山市都市マスタープラン」を策定した。この都市マスタープランでは、まちづくりの理念を「鉄軌道をはじめ
とする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」とし、地域の
拠点を「お団子」に、公共交通を「串」に見立てた「お団子と串」の都市構造を目指すとしている。
具体的には、都市機能が集積した「お団子」を形成するため、「中心市街地活性化基本計画」や「まちなか居住推進計画」等を策定するとともに、「串」の形成には、「公共交通活性化計画」を
策定し、コンパクトなまちづくりを推進している。この内、「公共交通活性化」については、路面電車ネットワークの形成などのプロジェクトを要として、事業を進めてきた。
その最初の事業として、本誌No.55において、「富山港線路面電車化事業のあゆみ」を報告した。この事業の特徴は、富山市がJR西日本から富山港線を引き継ぎ、将来富山駅の南側を走る富山軌道線(以後、市内電車と呼ぶ)
との接続を前提に富山港線を路面電車へ転換を図ることで、その再生を目指したことである。そしてその結果、富山港線の路面電車は、運行本数を3.5倍に増やし、新駅の設置、完全バリアフリー化、トータルデザイン等を
実施することで、サービスレベルを各段に向上させ全国初のLRTとして2006(平成18)年4月29日に開業したのである。
引き続きNo.56においては、「市内電車の環状線化事業のあゆみ」を報告した。この事業の特徴は、コンパクトなまちづくりを進めるためため「公共交通の活性化」や「中心市街地活性化」の主要事業として、路面電車としては
全国初となる「上下分離方式」を導入したことに加え、路面電車と街並みをトータルにデザインし、魅力的な都市空間として整備し、再生したことである。
そしてNo.57においては、「路面電車南北接続事業概要と準備状況」を報告した。この事業の特徴は、富山駅の南北でそれぞれ別々に進められた二つの重要なプロジェクトを富山駅の高架下に設けた新停留場で接続すること
により、富山駅の南北をつなぐ新しい公共交通軸の実現を目指したものであり、南側の「第1期事業」が北陸新幹線と同時開業したことである。
今回は、「富山市の路面電車南北接続(第2期事業)と運行の一元化へのあゆみ」について報告する。南北の軌道施設が接続し、合わせて約15.2kmのLRTネットワークが完成したことにより2020(令和2)年3月21日から富山港線と
市内電車の一体的な運転が始まった。報告の内容は、前回の第1期事業に続き第2期事業の概要に加え、運行の一元化の実現とこれに合わせ富山地方鉄道(株)と富山ライトレール(株)が合併したこと、南北直通運転と全線均一運賃が実現したこと等である。
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JR西日本の駅ホーム上のお客様の安全性向上に向けた取り組み
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佐伯 祥一 :西日本旅客鉄道株式会社駅業務部長
JR西日本(以後、当社と記します)は、2005年4月25日に発生させた福知山線列車事故の重大性を受け止め、「安全性向上の取り込み」を経営の最重要課題とし、具体的な実行計画を立てて、様々な取り組みを進めています。2018年度から新たに
スタートした「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」では、「安全考動計画2017」で目標として掲げた「ホームにおける鉄道人身障害事故3割減」から、ホーム以外にも範囲を拡大し、お客様が死傷する鉄道人身障害事故をさらに減少させることを目標としています。
本稿では、ホームでお客様に安心してご利用いただくための当社のホーム上の安全性向上に向けたハード・ソフト両面からの様々な取り組みについてご紹介します。
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京都・梅小路エリアマネジメントについて
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若菜 真丈 :西日本旅客鉄道株式会社 執行役員近畿統括本部副本部長 近畿統括本部京都支社長 京都・梅小路みんながつながるプロジェクト代表
山口 真生:西日本旅客鉄道株式会社 京都支社 総務企画課長 京都・梅小路みんながつながるプロジェクト事務局長
三宅 三喜 :西日本旅客鉄道株式会社 京都支社 総務企画課(梅小路PT)課長代理
京都・梅小路エリア(以下、梅小路エリア)は、京都市の下京区に位置し、東西は京都駅から梅小路京都西駅、京都鉄道博物館、南北をJR京都線(東海道線京都〜大阪の愛称線名)から七条通りまでとするエリアです。エリア内には京都鉄道博物館、京都水族館などの
文化・観光施設も多く、またエリア周辺には東西両本願寺や、歴史ある島原地区もあり、京都の西側の観光拠点としてポテンシャルの高いエリアです。
この梅小路エリアにおいて、地域のポテンシャルを最大化するため、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)と京都水族館が梅小路エリア内に所存する企業や団体などともに、2015年に発足させたエリアマネジメント団体が、「 京都・梅小路みんながつながるプロジェクト(京都・梅小路まちづくり推進協議会)」です。
当プロジェクトは、京都市や地域の方々と一緒に、京都・梅小路エリアの持続的な賑わいや回遊性の向上を推進し、活性化に取り組むことにより、京都駅西部エリアの更なる魅力向上や京都の観光振興・成長戦略に資することを目的として活動しています。
本稿では、当プロジェクトの発足経緯から活動内容について報告します。
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新型コロナ感染拡大下における大学の対応と大学生
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青木 眞美:同志社大学商学部教授
2020年は全世界が新型コロナウイルス感染の拡大によって、大きく社会や経済が変容した。まだまだ情勢は変化すると思われるが、ここでは8月末の時点における大学での対応や問題について紹介する。
初めに日本における新型コロナウイルスの感染の状況について時系列的に整理し、次いで大学における2020年4月からの春学期における対応を紹介する。さらにアンケート調査などから春学期の授業運営や大学運営についての大学生や教員の反応がどのようなものであったかを述べることとする。
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[鉄道施設探訪記] 第21回 初めてのポンツーン工法で架設された長崎本線・六角川橋梁を訪ねて
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所情報管理部担当部長
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
一級河川の六角川は、佐賀県武雄市と長崎県波佐見町の県境付近を源流とし、武雄市を東進して白石平野から有明海へと流下する。急流河川の多い日本にあっても、2万分の1(0.05パーミル)という全国でも屈指の緩勾配の河川で、下流域の白石平野を蛇行しながら流れて、河口部で牛津川と合流する。干満差の大きい有明海の影響を受けて感潮区間が長いことでも知られ、河口から29km
地点まで海水が遡上し、六角川橋梁付近でも約5mの干満差がある。1930(昭和5)年3月9日に開業した現在の長崎本線肥前山口〜肥前竜王間は、六角川の蛇行部を横断したが、架設工事はこうした自然条件をうまく利用し、ポンツーン工法と呼ばれる珍しい工法を鉄道橋梁として初めて採用した。今回は、当時の記録に基づいて、六角川橋梁の架設工事の様子などを紹介してみたい。
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