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交通と統計 2023年1月(通巻70号)



2023年1月31日発行
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鉄道150年の歴史と今後の想い
  
森地 茂もりち しげる:政策研究大学院大学客員教授

  本稿は、令和4(2022)年10月31日に、わが国最初の鉄道が明治5(1872)年に新橋・横浜間で開業してから150年目にあたることを記念しておこなった鉄道建設調査会講演における「鉄道150年の歴史を振り返る」をもとに書き加えたものである。
 鉄道の普及過程で、日本は英国から47年遅れていたが、年間建設距離はアメリカの200Km/年に対し125Km/年と当時の国力から見れば急速であった。また、その後わが国は@新幹線、A国鉄民営化、B私鉄のビジネスモデル、C空港アクセス鉄道で世界の鉄道の変革を促し、 その他にも多くの先導的役割を果たしてきたのである。以下明治から戦前まで、戦後から高度成長期、その後の現在までの3期間に分けてわが国の鉄道政策を振り返り、今後に向けての教訓を読み取りたい。
covid-19下のテレワークと自動車利用の変化が わが国のCO2排出に及ぼす影響の地域別計量分析
  
森 俊介 もり しゅんすけ :国立研究開発法人 科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター 研究統括/上席研究員

 2020年、菅首相(当時)はわが国の2050年以降の「ゼロミッション目標」を公約した。その中で、家庭部門の排出削減は大きな課題となっている。家庭部門の課題は@生活活動と密着した排出のため 、排出源は広く薄く分布していること、A暖房用、冷房用、輸送用などのエネルギー需要に気候や地理的条件が影響すること、ライフスタイルや住まい方などの多様性等、多方面である。家庭部門では、 人口減少のため住宅などストックの更新の減少が予想されるため、短期的なトップダウン的対策オプションが採用されづらいことも課題となる。一方、 情報技術の進展は新しい働き方・暮らし方の可能性を広げた。covid-19の中、テレワークやオンライン会議は一般にも広まった。これは移動需要を下げた可能性がある。
 ここでは、科学技術振興機構低炭素社会戦略センターで行った2つの政策提案書、「通信トラヒックの推移及びcovid-19緊急事態宣言のもとででのテレワークの影響の定量的分析」と「人口変化、住宅種類選択、住宅省エネルギー技術と電力化を考慮した家庭部門市町村別CO2排出の地域別将来推計」 の中から、移動と情報技術の効果に関する分析例を紹介する。
広島駅改良・駅ビル開発とまちづくり〜広島・瀬戸内の魅力を高める新たな都心核の形成〜 
  
畑中 克也はたなか かつや:西日本旅客鉄道株式会社 技術理事 建設工事部長
伊豫田 裕いよた ひろし:西日本旅客鉄道株式会社 大阪工事事務所 広島駅ビル工事所 所長
田原 潤一たはら じゅんいち:西日本旅客鉄道株式会社 大阪工事事務所 広島駅ビル工事所 副所長
垣沼 輝太かきぬま てるた:西日本旅客鉄道株式会社 大阪工事事務所 広島駅ビル工事所 係長

 中国・四国地方の最大ターミナル駅である広島駅周辺地域では、高い開発ポテンシャルを持ちながら、2000年代初頭まで、老朽化した低層建物が多く存在するなど開発余地が残されていた。 2003年に同地区が都市再生緊急整備地域に指定されて以降は、若草地区市街地再開発事業(広島駅北口広場の東側一帯)を皮切りに整備がスタートし、新市民球場建設、二葉の里地域の土地区画整理事業 と合わせた広島駅南北自由通路整備と駅橋上化及び駅北口広場整備、さらに駅南口においては、駅前B、Cブロックの市街地再開発事業が行われ、駅周辺の風景はこの10数年で一変した。広島駅を中心と する交通機能の強化と駅周辺の大改造が一体的に進捗し、駅と周辺地域が大きく変貌しつつある。
 近年では、広島駅南口広場において、広島電鉄の路面電車を広場へ高架で進入させるなどの駅前広場の再整備に合わせた駅ビルの立替え工事、広島JPビルデング(広島東郵便局跡地、2022年9月オープン) 等の開発が進捗している。JR西日本では、鉄道沿線の自治体が進める事業と連携した鉄道整備を通して、「駅からはじまるまちづくり」の取込みを進めている。 本稿では、広島都市圏で進めてきた、JR西日本の「駅からはじまるまちづくり」の取組みの全体像を紹介したうえで、その取組みの核として、都市圏全体の交通・まちづくりに大きなインパクトを与える、 広島駅の大改良について、南北自由通路整備・橋上化と、現在進行中のに南口広場再整備及び駅ビル立替プロジェクトを中心に、駅周辺のまちづくりとの関連性にも触れながら紹介する。
[近代日本の技術の礎を築いた人々]  第9回 幕末維新期の教育と現代高等教育への示唆(T)
  
大山 達雄おおやま たつお:政策研究大学院 名誉教授

  本連載では、幕末から明治維新期にかけて、わが国が欧米の進んだ科学技術を導入するに際して、激動の時代と厳しい状況の中で知識の導入、人材の育成をどのように して実現したか、そして当時の人々の努力がどのようなものであったかを探ることを試みた。 そこで、"技術の礎を築いた人々"というタイトルのもとで、明治初期に活躍し、当時のわが国にとってはまさに西欧諸国と比較してかなり遅れているとされる技術の導入 発展に寄与することによって、その後のわが国の経済産業の発展に大きな貢献をしたとされる人々の功績を紹介してきた。このような中で筆者にとって大きく印象に残っている ことは、ここで取り上げた人々に共通するものとして、当時の教育、それも現代の言葉で高等教育、エリート教育とも言うべきものがあったのではないか、そしてそのような教育 を受けた子弟たちがその後の活躍の基礎を身につけたのではないか、ということであった。したがって、そのようなわが国の当時の教育を再度綿密に眺めてみることによって、 現代の高等教育にとって欠けている、あるいは必要とされる何かが見いだされるのではないかということであった。
 昨今のわが国の"研究力"は低下したと言われて久しい。わが国の高等教育の在り方にその原因があるのではないかといった議論もある。原因が不明のまま、多くの議論が なされている中で、わが国の研究力が低下の一途をたどり、またわが国の大学、高等教育の質の低下も叫ばれていることに対する、このような試みも無駄ではないと考える。
[鉄道施設探訪記]  第29回 神田駅の百年史(中) -山手・京浜東北線の分離運転と神田駅-
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所 アドバイザー 

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 今回は神田駅が東京・上野間の延伸により山手線の環状運転化による中央線、山手線の乗換駅に、さらに終戦後の混雑緩和に伴う、山手線と京浜東北線の分離による複々線化による神田駅の工事などについて述べる。
[速 報] 鉄道統計(令和3年度)JR・関連機関  
  
  鉄道に関する基本数値(社別の線区数、駅数、運輸成績、社員数、損益計算書、貸借対照表等)を各種資料から集約した統計資料です。
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