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交通と統計 2023年4月(通巻71号)



2023年4月28日発行
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戦前の鉄道・道路分野の連携と確執
  
北河 大次郎きたがわ だいじろう:文化庁文化資源活用課 主任文化財調査官

  インフラ施設を所管する省庁によって政策はまちまちで、時には対立さえ生まれることがあった。日本の場合、鉄道と道路は、それぞれ工部省(後、逓信省、鉄道省、運輸省)と内務省(後、建設省)が所管した。平成13年の国土交通省の誕生は、両者の統合という大きな歴史的転換点であったが、それまでの間、特に道路部局が内務省の中にあった戦前期までは、両者が生み出す緊張のなかで、国土と都市がかたち作られていった。そして、その連携または対立の痕跡は、今も身の回りに残る土木遺産から読み取ることが出来る。ここではいくつかのそれに関連した話題を紹介したいと思う。
JR東日本の新幹線の「進化」の歩み - 40年を振り返る -
  
東日本旅客鉄道株式会社 新幹線統括本部 40年の足跡編纂プロジェクトチーム

 東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)にとって2022年は東北・上越新幹線の開業40周年をはじめ、各新幹線開業の節目の年を迎える「新幹線YEAR]となりました。
 新幹線の生い立ちは、当時の技術者が様々な検討を重ね、日本全国にネットワークを持つていた狭軌から脱却し新たに標準軌を導入、新しい鉄道の全体システムを構築することから始まっています。今日、当社の新幹線が安全・安定な輸送を行っている礎は、新幹線業務に携わる人々が系統を超え、新たな領域への持続的な挑戦によるものであり、その挑戦の根底には常に「安全」の二文字があります。
 本稿は、技術・人・組織の視点からJR東日本エリアの新幹線の速度向上や安全向上等の40年の歩みを振り返るとともに、"チーム新幹線"として災害やコロナ禍を乗り越え一丸となり取り組んでいる「いま」の姿と、「未来」へのさらなる飛躍に向けた取り組みを俯瞰的に述べたものですが、新幹線に関わる部門・技術分野は極めて多岐にわたることから、そのすべてに触れることができないことをご容赦ください。
首都圏五方面の明暗 -輸送力の大小と郊外拠点の有無の影響 
  
大内 雅博おおうち まさひろ:高知工科大学教授・システム工学群副学群長

 国鉄〜JRの首都圏における五方面(東海道、中央、東北、常磐、総武)と称される各線区の定期旅客輸送量の、国鉄発足の1949(昭和24)年度から2017(平成29)年度まで の推移を調べた。東京駅から約30Kmの距離にある各線の拠点駅(横浜、国分寺、大宮、柏、津田沼)から上り方1駅間の定期旅客輸送密度の序列は、三鷹・立川間の複々線化が未完成のままで輸送力の制約の大きい中央線を除いて、高い順に 東海道、東北、総武、常磐線のまま変化がなかった。東京駅から約50Kmの距離にある各線の合計13駅(藤沢、鎌倉、西八王子、羽村、秋川、川越、鴻巣、久喜、藤代、布佐、物井、誉田、八幡宿)の上り方1駅間の定期旅客輸送密度を5方面に束ねた各合計値 も、中央線方面を除いて、高い順に東海道、東北、総武、常磐方面のまま変化がなかった。 2017年度の各方面の30Km圏に対する50Km圏の上り方1駅間の定期旅客輸送密度の比は、中央方面と東海度方面が最高で、東北と総武方面が続き、常磐方面が最低であった。 この差が生じた理由を、各方面における30Km〜50Km圏各駅からの定期乗車客の都心指向度に求めた。各駅から乗車する、都心方向とその逆の郊外方面への流れに二分される定期旅客について、上りと下りの乗客数の合計に対する、上り乗客数から 下り乗客数を差し引いた値の比である「上り超過比」を定義し、定期乗車客の都心指向度の指標とした。 その値は高い順に常磐、東北、中央≒総武、東海道方面であった。概ね、上り超過比の低い方面ほど、30Km圏の拠点駅における上り方1駅に対する下り方1駅間の定期旅客輸送密度の比が高かった。 21世紀に入ってから、東海道方面に対する、東京から同距離圏にある他方面の定期輸送密度の比の値が概ね低下傾向で、すなわち東海道方面の比重が高まってきたことを示したが、輸送量の伸びに制約のあった30Km圏の中央線のみ変化が無かった。
都市政策としての鉄道の活用
  
金山 洋一かなやま よういち:国立大学法人富山大学 都市デザイン学系 特別研究教授

  本稿では、先ず、鉄道が都市に与えるインパクトを、新幹線、大都市圏の鉄道、地方の鉄道の事例を紹介し、人口問題を意識しつつ社会経済効果として整理する。 次に、我が国が抱える根源的な課題、及び鉄道分野が抱える課題とともに、鉄道が持つ都市・住民に寄与するポテンシャルの発揮要件を論ずる。そして、地方都市を主な対象として、解決に貢献し得る基盤としての鉄道に焦点を当て、 鉄道が効果を発揮し得る制度的対応を提案する。そして最後に、都市の将来を持続可能なものとするデザインに必要と思われる意思決定に係るパラダイムシフトを示す。
物流の現状と今後の持続・発展策について
  
増田 悦夫ますだ えつお:流通経済大学 名誉教授

 物流は貨物などモノの移動を司るサービスであり、流通を支える重要な社会インフラである。電気、水などと同様、その機能の停滞は、私たちの生活に深刻な影響を与え得る。 我が国は貨物輸送の約9割を自動車、すなわちトラックに依存している。その現状を見た時、輸配送を担うドライバーの不足や多くの時間外労働、効率的でない輸送実態などの問題が浮き彫りとなっている。働き方改革関連法の施行や脱炭素化の目標への対応を考慮すると、現在の状況がそのまま進行した場合、今後の物流需要を満たせなくなるのではないかという認識が当業界の 共通認識となりつつある。
 本稿では、物流の基本概念を説明した上で、IoT,AI, ロボティクス、自動走行車等の技術進歩も考慮した場合に考えられる持続・発展策を示し、政府等で積極的に推進されている最近の取り組み状況を紹介する。最後に今後に向けての期待を簡単に述べる。
広島電鉄の路面電車の広島駅南口広場再整備等に伴う路線変更などの事業について
  
八木 秀彰やぎ ひであき:広島電鉄株式会社 電車事業本部 広島駅・宮島口推進プロジェクト課長

 広島電鉄株式会社(以下、広島電鉄)の事業は、大きく分けて電車、自動車(バス)、不動産の3つの事業から成り立っている。 電車事業は、軌道区間である広島市内を運行する市内線19.0Kmと広電西広島から広島都市圏のベットタウンである西部沿岸沿いに日本三景の一つ「宮島」の玄関口である広電宮島までを運行する宮島線16.1Kmを合わせた計35.1Km, 全線複線で運行系統は8系統で営業している。 昭和40年代にはモータリゼーションの進展により路面電車が交通渋滞に巻き込まれ定時制や速達性が損なわれ利用減少に歯止めがかからず、全国的に路面電車が廃止された。 その中で広島においては行政機関の協力を得て「自動車の軌道敷地内乗り入れ禁止]「電車優先信号の設置」「軌道敷地内停止禁止ゾーンの設置」など路面電車の走行空間改善に取り組んだ。
 近年、路面電車は、交通の円滑化、移動のバリアフリー化、環境負荷の削減、集約型都市構造への転換、魅力ある都市と地域の再生といった観点から見直されている。
 現在、広島電鉄は広島市が2014(平成26)年9月2日に決定・公表した「広島駅南口広場の再整備等に係る基本方針」に沿って、広島市と西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)と連携して、JR西日本が整備している新広島駅ビルに 広島駅南口広場(以下、南口広場)への進入ルートを駅前大橋ルートとし、駅前大橋南詰交差点から 高架で乗り入れるとともに、市内中心部を循環する路面電車路線を整備する事業を2020(令和2)年10月より着手し、2025(令和7)年春の共用開始を目指して鋭意推進中である。
東武博物館 -展示方法と活動内容の特徴
  
山田 智則やまだ とものり:一般財団法人東武博物館 館長(専務理事)

 東武博物館は科学系博物館であるとともに、企業博物館として類別される博物館です。そもそも日本国内には、世界的に見ても非常に多くの企業博物館が存在しています。企業博物館は、各企業がその歴史や遺産などを展示し、また、企業理念や活動内容を紹介する場所で、企業の教育活動や広報活動の一端を担っている施設とも位置付けられるものです。ただし視点を変えてみますと、企業博物館もひとつの博物館であり、博物館が本来もつ役割もまた果たす必要があると思われます。それは、歴史的価値の高い資料や文化・産業遺産を収集し保管すること、つまり、一企業の遺産としてではなく、日本の貴重な遺産としてそれらを収蔵して後世に伝える、といった意識も必要なのではないかと考えられます。
 東武博物館は、東武鉄道株式会社(以下 東武鉄道)が創立90周年の記念事業の一環として、東武鉄道をご利用いただいているお客様への社会的還元を主として、また子どもたちの社会教育の場として「交通文化の普及と交通道徳の昂揚」を目的に1989年5月20日、東武鉄道発祥の地に近い伊勢崎線(現・東武スカイツリーライン)東向島駅(東京都墨田区)の高架下に開館しました。その後、2009年5月の開館から20年が経過したときに、東向島駅付近高架橋の耐震補強工事がおこなわれたこともあって、その前後約半年間臨時休館として、実物車両の追加展示、既存展示物及諸設備の更新工事を行い、2009年7月22日にリニューアルオープンして現在に至っています。
[鉄道施設探訪記]  第30回 神田駅の百年史(下) -新幹線・東京縦貫線高架橋の建設と神田駅-
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所 アドバイザー 

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 今回は前回に続き神田駅の東北新幹線の東京・上野間の建設に伴う工事での改造、東京縦貫線(上野東京ライン)の工事の機会に実施した、旅客流動の変化対応、バリアフリー対応、耐震補強など、課題に対する改良工事について述べる。
 
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