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交通と統計 2023年7月(通巻72号)



2023年7月31日発行
定価2000円(税込み・送料別)
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東京都市圏における新たなライフスタイルを支える鉄道
  
石神 孝裕いしがみ たかひろ:一般財団法人計量計画研究所 都市地域・環境部門長
稲原 宏いなはら ひろし:一般財団法人計量計画研究所 都市地域・環境部門 グループマネージャー
石井 良治いしい りょうじ:一般財団法人計量計画研究所 データサイエンス室ITマネージャ

  本稿は、現代のライフスタイルおよび移動パターンの変化に対応するように、東京都市圏構造をアップデートすることの必要性を提示するものである。
 共働き世帯の増加、総トリップ数の減少、外出率減少など、東京都市圏の社会動向は急速に変化している。 東京都市圏パーソントリップ調査のデータによれば、現在の都市圏構造は、過去の社会状況、特に高度成長期や専業主婦が主流だった時代のライフスタイルを反映したもので、近年増加している共働き家庭や働きながら子育てを行うニーズに対応しきれないと解釈できる。
 オンライン活動の拡大は、新しい職住近接型ライフスタイルの実現可能性を示唆している。しかし、その一方で鉄道の利用が減少し、それに伴い交通サービスの品質が低下する可能性があり、これらの変化は人々のライフスタイルに新たな影響を及ぼす可能性がある。
 そのため、東京都市圏の居住者にどのようなライフスタイルを提供する都市構造としていくべきか、という問いについて、地域づくり全体の観点から考えることが求められている。 官民による連携を通じて、これらの変化に対応した新たな時代の都市圏構造あり方を検討するとともに、その実現に向けた取り組みを推進することが重要である。
新型コロナウイルス感染症5類への移行と新たな日本の観光政策と課題
〜日本経済を支える新たな「食い扶持」、観光立国実現に向けての第2ステージ〜
  
篠原 靖しのはら やすし:跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 准教授

 日本経済は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)により大きな打撃を受け景気の回復に時間を有し、個人所得の低迷、原油価格の高騰からの物価上昇が続いている。更に深刻化する少子高齢化問題などに加え、従来日本を牽引してきた得意分野の産業も後発国の追従を許している。こうした中で今後の日本経済を牽引する新たな「日本の食い扶持」の確保が重要となっているが、 国連世界観光機関(UNWTO)が実施した世界の旅行客に関する意識調査において、東南アジア、欧米共に「海外旅行したい国・地域」でナンバーワンに日本が選出された。この3年間コロナ感染により人流が抑制されてきた観光産業であるが、2023年5月に政府がコロナを感染症法上の位置づけを5類に移行した事に伴い、国内、海外を問わず観光客が大きく動きだしている。本稿では停滞する日本経済、そして将来を見据えた産業構造の変革期において、改めて 日本の観光の可能性と観光が我が国経済の次代の「食い扶持」になるための政策と課題を整理する。
大阪駅(うめきたエリア)開業と輸送ネットワークへの効果 
  
三津野 隆宏みつの たかひろ:西日本旅客鉄道 執行役員近畿統括本部長
川嶋 篤司かわしま あつし:西日本旅客鉄道 近畿統括本部 経営企画部 課長
石原 圭いしはら けい:西日本旅客鉄道 近畿統括本部 経営企画部 主査

 JR西日本の大阪駅北側では、梅田貨物駅跡地において「うめきた2期まちづくり」が進められている。あわせて大阪市とJR西日本は東海道線支線地下化・新駅設置事業を推進し、 大阪駅(うめきたエリア)は2023年3月18日に開業した。本稿では事業の概要と大阪駅(うめきたエリア)がもたらす鉄道ネットワークへの効果についてご紹介する。なお大阪駅(うめきたエリア)は、事業上は「新駅」、その他は「大阪地下駅」とも 表記する。
[近代日本の技術の礎を築いた人々]  最終回 幕末維新期の教育と現代高等教育への示唆(U)
  
大山 達雄おおやま たつお:政策研究大学大学院名誉教授

  明治維新期から明治中後期にかけて、わが国の技術の発展、技術者養成高等教育の創設と整備に貢献したと思われる代表的な人々を取り上げ、彼らがどのような境遇の中で、何を考え、どのような夢と目的に向かって努力し、どのような 人生を送ったかを紹介するシリーズである。

 工部省はイギリス人鉄道技師エドモンド・モレルの建議によって1870(明治3)年10月に創置された。明治維新期のわが国の殖産興業や工業化を推進するための政府中央官庁としての工部省の主要任務は、鉄道、造船、電信,製鉄、鉱山などの官営事業を管轄することによって、わが国の近代国家としての社会インフラ整備を行うことであった。
 工部省においては新たな工業人材を育成するための各種の試みがなされる中、政府の強力な関与によって、工部大学校はじめとして工科系各種専門学校が設立された。そして当時の工業、技術系の人材育成で最も大きな貢献をしたのが工部大学校である。
[鉄道施設探訪記]  第31回 「よん・さん・とお」の象徴 -中央本線・新桂川橋梁を訪ねる
  
小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所 アドバイザー 

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。                  

 一般に「よん・さん・とお」と呼ばれた国鉄のダイヤ改正は、その名のとおり1968(昭和43年)に実施され、581系特急形寝台電車を50Hz/60Hz両用とした583系電車が制作されて特急「金星」「明星」としてデビューし、大出力機関を搭載したキハ181系特急形気動車が新設されて特急「しなの」が新設されるなど、数ある国鉄のダイヤ改正の歴史の中でも画期的な大改正となった。 また、鉄道施設でも「よん・さん・とお」をめざして複線化や電化などの改良工事が各地で進められたが、その象徴とも言うべき存在が今回紹介する中央本線鳥沢・猿橋間の新桂川橋梁である。新桂川橋梁は、鉄道橋梁としては当時の最大支間長である130mの巨大な複線上路ワーレントラスとして完成し、技術的にも鉄道橋梁技術のブレークスル―を果たした。
 
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