JR西日本における鉄道文化遺産の保存・活用の取組み
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杉山 幸介 :西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部 京滋支社副支社長(前経営戦略本部 鉄道文化推進室長)
西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)では、鉄道文化財の保管や管理、また、それを活用する活動を総じて「鉄道文化活動」と捉え、積極的な取り組を行っている。鉄道文化財については、日本国有鉄道(以下、国鉄)から継承した「鉄道記念物」、「準鉄道記念物」と
いうこれまでの制度に加え、JR西日本独自の制度である「登録鉄道文化財」という枠組みにより、保存・管理を進めている。それらについては、京都鉄道博物館を中心とした複数の拠点で活用、発信している。鉄道文化活動はJR西日本が単独で進めても限界があると考えることから、国内外
の博物館や鉄道会社との連携を深めることで、その効果をさらに高めるよう継続的な努力を重ねている。今後も鉄道文化財の収集・保全や活用・発信に取り組み、鉄道文化を将来にわたって継承する「鉄道文化活動」を推進していく所存である。
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日本における駅舎の保存・再生デザイン(後)
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大内田 史郎:工学院大学 建築学部 建築デザイン学科 教授
本稿は現在の我が国における駅舎の保存・再生デザインの在り方について明らかにすることを試みるものである。具体的には、建築的な観点から保存・再生デザインと
しての手の加え方(インターベンション)の程度に応じた6つのカテゴリー (1.創建時の姿が保全(Preservation)されている駅舎、2.創建時の姿に復元・修復(Restoration)された駅舎、3.創建時の姿を基本に改修(Renovation)された駅舎、
4.創建時の姿を基本に復元・再築(Reconstruction)された駅舎、5.駅以外の用途に転用(Conversion) された駅舎旧駅舎、6.俊工事の敷地から曳家・移築(Relocation)された旧駅舎)に分類したうえで、それぞれの代表的駅舎を取り上げて
考察し、駅舎の保存・再生デザインとしての特徴や傾向について検証した。
今回は前回に続き、4.創建時の姿を基本に復元・再築(Reconstruction)された駅舎、5.駅以外の用途に転用(Conversion) された駅舎旧駅舎、6.俊工事の敷地から曳家・移築(Relocation)された旧駅舎)について述べる。
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イギリス植民地時代のインド鉄道の歩みとその整備効果(第三部)
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高津 俊司:株式会社レールウェイエンジニアリング 取締役
第三部 技術移転と整備効果
最終回となる本稿では、1947年のインド独立までのイギリス植民地時代におけるインドの鉄道の技術移転と整備効果について述べる。
最初にインドの地形や地質、自然環境などを反映したインドにおける橋梁やトンネルなどの鉄道建設技術の進展、鉄道建設資材や軌道材料、さらに特徴的な
鉄道建設事例として、カーツ区間の鉄道建設、インド北西部の鉄道建設、山岳鉄道の概要ついて紹介する。
日本ではお雇い外国人からの鉄道における技術移転が早い段階で進展したが、イギリス植民地下のインド鉄道の工学教育と技術移転に関して、人材の登用、機関車
などの鉄道製品の国産化について述べ、その課題などを考察した。
さらに、鉄道整備による社会的・経済的効果について、国民所得や各産業への影響を各種文献や統計資料から把握し、その全体的な効果のまとめと評価を行った。
なお、本稿の対象は独立前までの英領インド鉄道(現在のパキスタン、バンデラデシュを含む)の歩みとその分析評価であり、独立後から現在までのインド鉄道については
定性的な分析に留めている。
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JR北海道の新幹線総合システム(CYGNUS)について
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大日向 利朗:北海道旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 電気部 企画課長
土屋 嘉彦:北海道旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 電気部 システム課長
高須賀 淳:北海道旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 電気部 システム課 主席
1988(昭和63)年3月13日に青函トンネルが開業し、津軽線、海峡線、江差線、函館本線からなる青森駅と函館駅とを結ぶ線路群に「津軽海峡線」という愛称が付けられた。海峡線区間は新幹線、在来線
の共用とすることを前提として、トンネル等の建造物が建設された。
2016(平成28)年3月26日の北海道新幹線の開業に伴い、海峡線区間(新中小国信号場・木古内間)において新幹線と在来貨物列車が共用区間として走行するために、新幹線軌間1.435mm、在来線軌間1.067mmの三線軌条化への
更新が実施された。
この三線軌条区間を含む新青森・新函館北斗間における新幹線、在来線貨物列車の運行管理を行うために、「北海道新幹線総合システム(CYGNUS:Computer system for signal control and useful maintenance of Hokkaido Shinkansen)」
が導入された。
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SIRIUS 〜シリウス〜 (九州新幹線・西九州新幹線指令システム)の変遷
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佐藤 公広:九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 工務部 システム課長
齋藤 憲司:九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 工務部 システム課 課長代理
九州旅客鉄道株式会社(以下、当社)における新幹線は、2004年に九州新幹線が新八代・鹿児島中央間にて部分開業し、2011年に九州新幹線(鹿児島ルート)「博多・鹿児島中央間」が全線開業し、2022年に西九州新幹線(西九州ルート)「武雄温泉・長崎間」が開業した。
九州新幹線の建設計画に関しては、1972年に九州新幹線を含む5路線の整備新幹線の基本計画が決定され、1973年に5路線の整備計画が決定された。その後、1991年に九州新幹線の最初の建設区間として新八代・鹿児島中央間の工事実施計画が認可となり建設を開始、整備計画から
約30年の時を経て鹿児島ルートの部分開業に至った。その後、次区間として博多・新八代間の建設により鹿児島ルートの全線開業、そして武雄温泉・長崎間の建設により西九州新幹線の開業に至っている。
当社の新幹線指令システム(以下、シリウス)は、これらの開業に合わせながら改良をその都度行い、現在の姿となっている。鹿児島ルートの部分開業(第1期)、全線開業(第2期)、および西九州新幹線の開業(第3期)を踏まえながらシリウスの変遷について紹介する。
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[鉄道施設深訪記] 第35回 伊勢電気鉄道から豊橋駅へ -城海津跨線橋-
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合技術研究所 アドバイザー
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
東海道本線・豊橋駅構内の神戸方に、城海津跨線橋と呼ばれる道路橋が豊橋駅構内を跨いでいる。この跨線橋のトラス部分は、かって伊勢電気鉄道・宮川橋梁のトラス橋を1952(昭和27)年に改造・転用したもので、すでに完成後72年の歳月が経過している。当時、使われなくなった鉄道橋を、道路橋などに転用する「橋のリサイクル」がしばしば行われていたが、一般には設計荷重が
より重い国鉄線の鉄道橋を再利用する例が多く、設計荷重が軽い私鉄の鉄道橋が転用されるケースは、鉄道国有化以前の私設鉄道の橋梁や、その後の私鉄買収で発生した鉄道橋を除いて稀であった。今回は、私鉄のトラス橋を転用した城海津跨線橋について、その沿革を紹介してみたい。
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