[インタビュー] 須田 義大 東大教授に聞く -自動運転が導く公共交通の将来像-
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聞き手 板谷 和也
世界的に自動運転に対する注目度はきわめて高く、米国・サンフランシスコなどでは無人タクシーが走っているほか、日本でも多くの地域で小型バスや隊列走行など自動運転の実証実験が行われている。今回は自動運転技術の第一人者である須田義大・東大教授に
、自動運転の到達点とこれからの方向性についてお話しいただいた。
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北陸新幹線(金沢・敦賀間)の開業
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小林 寛明:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 新幹線部 北陸新幹線課 総括課長補佐
仮屋崎 圭司:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 新幹線部 新幹線企画課 総括課長補佐
北陸新幹線(金沢・敦賀間)は、金沢駅(2015(平成27)年3月開業)から敦賀駅までの線路延長125Km(工事延長115Km)の路線であり、2024(令和6)年3月16日に
開業し、現在はJR西日本に貸付け、営業されている。
金沢・敦賀間は石川県内に2駅、福井県内に4駅が設置され、終点の敦賀駅では在来線特急のホームを1階に新幹線ホームを3階に設置し、乗換の利便性向上を
図っている。この開業により東京・福井間(北陸回り)の所要時間が36分短縮、大阪・金沢間が22分短縮され、首都圏および関西圏との結びつきがさらに強くなる
ことが期待されている。
本稿では、金沢・敦賀間の特徴的な土木技術、駅のデザインコンセプト、雪害対策などについて紹介するとともにもに、自治体等の公表資料や、2020(令和2)年度
に実施した北陸新幹線(金沢・敦賀間)事業再評価の報告書をもとに、新幹線開業により期待される多様な効果について紹介する。
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北陸本線(米原・直江津間)改良工事の歴史
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小野田 滋:公益財団法人 鉄道総合技術研究所 アドバイザー
米原を起点として敦賀、福井、金沢、富山、糸魚川を経て直江津へと至る延長353.8Kmの北陸本線は北陸新幹線の延伸とともに第三セクター鉄道に順次転換され、敦賀・大聖寺間
はハピラインふくい、大聖寺・倶利伽羅間はIRいしかわ鉄道、倶利伽羅・市振間はあいの風とやま鉄道、市振・直江津間はえちごトキめき鉄道となり、線路名称としての北陸本線は、米原・敦賀間の45.9Kmのみ
となって現在に至っている。しかし、この路線は東京を経由せずに、北海道、東北方面と関西方面を直結する貨物輸送ルートとしても重要な役割を果たし、札幌貨物ターミナルと
福岡貨物ターミナルを直行する貨物列車も通過している。
旧北陸本線が今も幹線鉄道としての役割を果たしていることは、1913(大正2)年に全通したこの路線が、昭和時代の中葉に複線化、電化工事を進めたのみならづ、新たにトンネル
を掘削してルート変更を行うことにより、急勾配や急曲線を解消し、豪雪や地すべりなどの災害にも強い路線へと脱皮した点にある。
本稿では、当時の工事記録などに基づいて、旧北陸本線が「本線」の名にふさわしい全線複線化と全線電化を達成するまでの歩みを振り返ってみたい。
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データで見るJR貨物
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日本貨物鉄道株式会社 経営統括本部 経営企画部
日本貨物鉄道(株)(以下、当社)は、日本で唯一の全国ネットワークで貨物鉄道事業を運営する会社であり、北は北見・釧路から南は鹿児島まで、全国239の
貨物駅と1日約400本の貨物列車運行により、全国の幹線物流を支えている。現在当社の営業線区は75路線、営業キロは7,800Km余りとなっているが、このうち当社が
第一種鉄道事業の許可を受けている区間は9線区であり、残る多くの線区は第二種鉄道事業区間となっている。また、1日の全走行列車の運行距離の合計は18.6万Km
にのぼり、これは地球約4.5周分に相当する。
昨今では、いやゆる「2024年問題」をはじめとしたトラックドライバー不足、あるいはカーボンニュートラルへの対応など、貨物鉄道への期待は大きくなっている。
そうした中で、当社も会社発足当初(1987年)に比べ、貨物駅などの拠点の集約化、車扱い輸送からコンテナ輸送への転換、車両の更新など、この37年余りの間で大きく
変化してきており、それは各種データにも表れている。
本稿では、鉄道事業部門を中心に各種データを示し、会社発足から現在までの変化と直近の状況について説明するとともに、現在の取り組みについても紹介したい。
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BRTの特徴と国内外の動向
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板谷 和也:流通経済大学経済学部教授
BRT(Bus Rapid Transit)は、定義が曖昧なままで用いられている用語である。国際的には、バスを用いた都市内大量輸送システムのことであり、クリチバ(ブラジル)やボゴタ(コロンビア)といった南米の大都市で採用事例がある。
そうした都市におけるBRTは、鉄道輸送、特に地下鉄に類似した役割を果たしている。優先信号とバス専用道路(専用レーン)、連節車両を活用し、鉄道と同様の車外運賃収受を行うことによる、高速・高頻度での運行がこの場合の
BRTの特徴である。
これに対し、日本のBRTは優先信号、バス専用道路・バス専用レーンの活用、連節車両の導入、車外運賃収受のいずれも適用事例があるが、全体的に速度が低いものが多く、また必ずしも都市内を運行しているわけではないなど、独自の
特徴を持って発展し続けている。
連節バスであるというだけでBRTを謳う事例も見られるなど、国内では一部、BRTに対し誤解があるように思われる。一方、BRTと名乗らないにもかかわらず実態は海外のBRT事例と遜色ない路線もある。
本稿では以上を踏まえて、国内外におけるBRTの特徴を類型化してそれぞれの実情を概観する。そのうえで、それぞれの論点を整理し、特に日本におけるBRTの到着点と今後の方向性について論じることとしたい。
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震災からの復興を支えるJR東日本のBRT -地域特性を活かした地域交通のリ・デザイン-
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小川 徹也:東日本旅客鉄道株式会社 グループ経営戦略本部 経営企画部門 復興企画室 室長
沼澤 吉美:東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 R&Dユニット 副長
竹本 佳文:東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 モビリティ・サービス部門 輸送戦略ユニット主任
JR気仙沼線(以下、気仙沼線)・JR大船渡線(以下、大船渡線)は東日本旅客鉄道(株)(以下、JR東日本)の鉄道路線である。2011年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けたことから
、現在は、被災した路線の一部区間をバス高速輸送システム(BRT)として復旧し、地域の基幹交通として運行している。
当時、被災した沿線地域の復興に貢献していくために、当該地域の交通事業者として、被災区間の復旧策についてさまざまな交通体系の比較・検討を行い、復興まちづくりに合わせ
た柔軟な対応ができ、かつ早期に利便性の高い交通手段の確保が可能なBRTを、仮復旧の手段として提案し運行を開始した。
その後、津波避難時の安全確保、まちづくりの進展に応じた駅設置やルート変更の柔軟性、専用道路整備による速達性と定時制の向上、そして早期復興が可能であった等のメリットを
活かし、継続的な改善の結果、BRTとして本格復旧へと移行することとなった。
本稿では、被災した気仙沼線・大船渡線の復旧過程とBRTによる地域交通の再建について、また、現在も続く地域との具体的な取り組み、さらに自動運転技術の活用に向けた実証実験に
ついて論じている。
「地域公共交通のリ・デザイン」が地域における昨今の重要なテーマとなる中、本稿の取り組みは、地域の皆さまと課題解決に向けて話し合い、ともに「リ・デザイン」の取り組みを
実践してきた事例の一つと言えるだろう。
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日田彦山線BRTひこぼしラインの概要
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西羅 悠平:九州旅客鉄道株式会社 営業部 企画課 副課長
深江 良輔:九州旅客鉄道株式会社 工務部 企画課 担当課長
2017(平成29)年7月九州北部豪雨により被害を受けた日田彦山線添田〜夜明・日田間は、沿線自治体と九州旅客鉄道(株)(以下、当社)の協議の結果、BRT(バス高速輸送システム)方式
による復旧が決定し、2023(令和5)年8月28日、「日田彦山線BRTひこぼしライン」として開業した。
日田"彦"山線の"星"となるように願いを込めて愛称名を「ひこぼしライン」と命名した当社初のBRTは、2017(平成29)年7月九州北部豪雨からの復旧ではなく、新たな「開業」と位置付け、
鉄道時代の3倍の駅数や1.5倍の運行本数の設定など、利便性を大幅に向上させた。
また、「ひと、地域、みらいにやさしい」をコンセプトに、社員による路線ブランディングやデザイン、当社グループ初のEVバスの導入など、新たな挑戦や新機軸を取り入れたものとなっている。
本稿では、日田彦山線のBRT化に至る経緯から、BRTひこぼしラインの概要、開業後の状況などを紹介する。
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