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交通と統計 2026年7月(通巻84号)



2026年7月31日発行
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鉄道事故調査の日米比較
  
奥村 文直おくむら ふみなお :株式会社峰製作所 顧問 (元国土交通省運輸安全委員会委員・鉄道部会長)

 本稿は日本と米国の鉄道事故調査体制及び鉄道の特徴を比較し、安全性向上の在り方を考察したものである。日本は2001年に航空・鉄道事故調査委員会が設置され、その後2008年に運輸安全委員会(JTSB)へ改組され、国土交通大臣に勧告することができる独立性を有する公的機関として事故原因の究明と再発防止の策定を担っている。一方米国では、1967年に国家運輸安全委員会(NTSB)が設立され、1975年以降は強い独立性を持ち、各規制機関に勧告を行っている。鉄道の役割は日米で大きく異なり、日本は旅客輸送が中心で高いシェアを持つのに対し、米国は貨物輸送が主体である。また日本の鉄道会社は不動産や流通など多角経営で収益を上げているのに対し、米国では運賃設定の自由化などの規制緩和により貨物鉄道が高収益化した。事故調査体制については、NTSBは専門家による調査チーム(パーティシステム)を組み迅速に原因分析を行い、多くの勧告を発出するが、実施を強制する権限は持たない。一方、JTSBは委員による複数回の審議を経て報告書を作成し、より慎重に結論を導く点が特徴である。勧告の発出は抑制的に行われ、実効性が重視されている。米国では重大事故を契機として制度改革が進む傾向があり、2008年のチャッツワース事故を受けてポジティブトレインコントロールシステム(PTC)の導入が法制化されている。この事故では、運転士の携帯電話使用による信号無視が原因とされ、人間の注意力依存の限界が明らかとなった。また、人的要因や睡眠時無呼吸症候群などが事故原因となることが示され、安全文化の重要性が指摘されている。総じて、米国は事故を契機として迅速な制度改革と技術導入、日本は組織的・継続的な改善という特徴を持ち、両国の比較から安全性向上のため、ヒューマンファクターを考慮した安全設備投資と安全文化の醸成が不可欠であると結論付けられる。
筑波研究学園都市とつくばエクスプレス
  
西村 志郎にしむら しろう株式会社URリンケージ フェロー(独立行政法人都市再生機構 元理事)

 筑波研究学園都市は1950年代の東京への過度な人口集中の防止策と科学技術振興策の両面から、国などの研究・教育機関の東京からの集団移転、研究体制の集中・刷新向上などを目的に開発面積2,700ha、計画人口10万人で計画された新都市である。用地買収、都市整備を日本住宅公団(現UR都市機構)が担い、研究機関施設は国が整備を行った。現在では、国などの研究・教育機関、民間研究所が数多く立地し、研究者数約2万人を有する我が国最大のサイエンスシティである。
 一方、つくばエクスプレスは秋葉原から筑波研究学園都市に至る新線として2005年に開業したが、その計画の源流は1950年代以降の東京への人口集中と通勤需要の急増に対応するための旧国鉄時代の「五方面作戦」や「開発線構想」にまで遡り、その後1978年に茨城県が打ち出した「第二常磐線構想」から1985年運輸政策審議会答申の「常磐新線」につながっていく。
 本稿では、都市サイドの視点から、筑波研究学園都市と鉄道との関係について、まず新都市の計画過程を振り返り、次に新線具体化後の沿線開発や沿線の発展状況を概観し、さらには鉄道新線開業が都市に与えた効果、影響について考察を加える。
新幹線の輸送密度の開業からの推移
大内 雅博おおうち まさひろ高知工科大学 システム工学群 教授 副学長

 国鉄時代から分割民営化された現在(2024年度)までの新幹線各区間の輸送密度の推移を求めた。国鉄時代の輸送密度は国鉄が編集した線別経営統計掲載の各線の平均値、または鉄道旅客駅別発着通過数量に掲載の輸送量から各線を鉄道管理局境で区切った区間の平均値を算出した。JR発足後の輸送量は、各社公表の輸送密度または国土交通省統計の輸送量(人キロ)から各線の平均値及び主要駅で区切った区間の平均値を算出した。
都市交通としてのモノレールの整備経緯と課題
  
板谷 和也いたや かずや:流通経済大学 経済学部 教授

 鉄道が2本のレールの上を走行するのに対し、車両が1本のレールの上に跨るか下に吊り下がって走行するものをモノレールと総称する。鉄道とモノレールは、英国で19世紀初頭のほぼ同時期に技術開発が進められたが、両者を比較すると鉄道の方に利点が多く、そのため鉄道の方が早く普及し、世界中で走るようになった。しかしモノレールも、条件によっては鉄道を上回るメリットがあり、国内外に複数の導入事例が存在する。
 本稿では、モノレールのこれまでの普及経緯と現在の状況について、国内の事例を中心に概説することとする。なおモノレールの特徴として、高架を走る場合が多いことと、輸送力が鉄道よりやや小さいということが挙げられるが、これらの特徴に合致しモノレールと類似した交通機関であるAGT(新交通システム)についてもあわせて取り上げる。
[鉄道施設探訪記]  第39回 神通川を渡る三代の橋梁
  
小野田 滋おのだ しげる:公益財団法人鉄道総合技術研究所アドバイザー

 鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、 むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。

 富山平野を潤す神通川は、わが国でも屈指の急流河川として知られ、しばしば流域に災害をもたらした。このため古くから治水工事が続けられていたが、1896(明治29)年に発生した洪水を契機として、富山県による本格的な河川改修事業が行われることになり、ほぼ同時期に富山付近の建設工事が進められていた北陸本線も、河川改修工事に合わせて橋梁を架設することとなった。その後も、神通川には昭和時代の複線化工事、平成時代の北陸新幹線工事によって三代の鉄道橋梁が平行して架かり、鉄道橋梁技術の進歩を示す見本となっている。しかし、橋梁名は最も古い明治時代に完成した高山本線と昭和時代に架設された北陸本線(現在のあいの風とやま鉄道)の橋梁を「新神通川橋梁」と称しており違和感があるが、その背景には河川改修工事によって架設されたという経緯が関わっている。今回は、神通川に架る三代の鉄道橋梁について、その沿革と現状を紹介してみたい。
 
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